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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

ももクロ論壇第三弾『アイドル感染拡大』予約ページ 

Saki縮小



ももクロ論壇第三弾評論誌『アイドル感染拡大』ついに発売!

アイドルに感染した者は皆アイドルになり、この社会は笑顔に包まれる。
196ページ、約22万文字を超える大ボリューム。

ももクロをはじめ、東京女子流、スマイレージ、Berryz工房、℃-ute、さくら学院、BABYMETAL、SPEED、Perfume、演劇、サイリウム、ラブライブ!AKB48、私立恵比寿中学、アリスプロジェクト、地下アイドル、地方アイドル、ヴィレッジヴァンガード、あまちゃん、マキシマムザホルモンなどなどを取り上げた、まさに文化評論の決定版!

現在本誌収録のまえがきと目次を公開しております。
ご参考にぜひ。


『アイドル感染拡大』販売サイト公開中。

●表紙モデルを務めたSakiさんが所属する2&の物販でもご購入できます。
ライブスケジュールなどは公式サイトをチェックしてください。

●ジュンク堂池袋店様でもご購入できます。
3Fタレント本コーナー。9F音楽書コーナーに置いてます。
見本誌もございますのでお近くにお越しの際はぜひジュンク堂池袋店にお立ち寄りくださいませ。

●ジュンク堂福岡店様でもお取り扱い開始です。
2階にございますのでぜひお立ち寄りくださいませ。



海外への発送、上記以外での購入方法をご希望の方は
hypersoniccooldive@hotmail.co.jp
こちらまでご連絡ください。






まえがき

『アイドル感染拡大』を手に取っていただき誠にありがとうございます。
ももクロ評論第3弾をようやく刊行することができました。

「ももクロとは一体なんなのか」

過去2作の評論誌ではそう問い続けてきたわけですが、ももクロ第11弾シングルのタイトルは『泣いてもいいんだよ』というとてもわかりやすいものとなっております。
なぜももクロはここまでわかりやすくなってしまったのでしょうか。

この本を読むことで再び「ももクロってやっぱり訳がわからなくってすごい」となることでしょう。
ももクロを探究する方々にはより理解を深めるための本となり、ももクロを知った気でいる方々には混乱をお届けする本となるはずです。

僕たちが思う「訳がわからない」の9割以上は様々な学問で証明可能であると言われています。つまり「訳がわからない」と言えるような範囲のものはほぼ理解することができるのです。もちろん学術的に解明できるということであり、それを全部把握できる、ということではありません。ですが僕たちが思う「訳がわからない」は言わば思考停止状態に陥っているだけとも言えるのです。

ももクロを見たときに生じる「なんだかわからないけどすごい」という感覚は果たしてなんなんでしょう。

ももクロと出会うことで僕たちは「訳がわからない」の旅に出ました。
そして様々なものと出会い経験と知識を獲得し、「訳がわからない」ものの多くがある程度理解可能であることを知りました。
歌声だけでなく表情や身体全体を含めて歌っているから心に突き刺さるんだ、とか。
これまでのももクロの歴史がより彼女たちを際立たせるんだ、とか。
いろいろ自分を納得させるための言葉を獲得したわけです。

このように「訳がわからないもの」をある程度納得することでももクロのことを知ったつもりになっていたのです。
「ももクロはやっぱり訳がわからない」というさらに先の地点へと到達するにはより深く感じて、より深く考えなければなりません。
(桃神祭一日目の百田夏菜子と観客とのコールアンドレスポンスで「ももクロはわかんない」という言葉が多くの人達に賞賛されたのは、本誌製作に大きな力を与えてくれた。7月27日追記)

この本はももいろクローバーZについて様々な角度から考察を試みた評論集です。
読み終えて多くの気付きを得て、さらにももクロという混乱に陥っていただけたとしたら、この上ない喜びです。
ももクロ探究の旅はまだまだ果てが見えないのです。

この本は目次を見て気になるページから読み進めていただいて構いませんが、はじめから通して読むことでより深く理解できるように構成をしました。
掲載順も読みやすさを重視し、読者のみなさまが無駄にストレスを感じないように、思考の旅に集中できるように構成しています。
註釈や説明的な言い回しも極力減らしました。ですがももクロについての知識が無い方でも読めるようなものを目指しました。

一緒にももクロを理解し、再び「ももクロって一体なんなんだ」という幸せな混乱に巻き込まれましょう。


ももクロ論壇責任編集 さかもと






『アイドル感染拡大』目次

にるそん考2 アイドル戦国時代の俯瞰的な分析  
にるそん サイト『にるそん考』

【序文】
【ももいろクローバーZ】
 1:コンテンツの特徴
  1期:王道アイドル期「斎藤悠弥、黒須克彦、ツキダタダシ」
  2期:飛び道具期「前山田健一、NARASAKI、AKIRASTAR、大隅知宇」
  3期:コラボ期「やくしまるえつこ、布袋寅泰、miwa、広瀬香美、高見沢俊彦、中島みゆき」
  4期:ダウンタウン期「武部聡志」
 2:戦略の特徴
  ①ベンチャー企業的なフットワーク(1弾から抜粋・改良)
  ②共闘という新しい形でのアイドル文化の形成(1弾から抜粋・改良)
 3:ストーリーの特徴
【東京女子流】
 1:コンテンツの特徴
 2:戦略の特徴
  ①次世代を見据えた育成
  ②リーダー不在
  ③事務所のパフォーマンスノウハウを継承
 3:ストーリー
【スマイレージ】
 1:コンテンツの特徴
  1期メンバー時代
  ・「天上人としての非現実的なアイドル像と俗世的なシチュエーションのギャップを強調している点」
  ・「過去のハロプロの伝説的楽曲を再アレンジして蘇らせる点」
  2期メンバー時代
  ・つんく的な関西感・コミックグループ感を強調
  ・ミュージカルからコミックソングまで楽曲の幅を広げプログレッシブミュージック感とジェットコースター感
 2:戦略の特徴
  ①日本一スカートの短いアイドルという外面的なアイコン
  ②初期段階からアイドルスキル完成型
 3:ストーリーの特徴
  ・ハロプロエッグの天才児たち
  ・AKB帝国を打ち崩す対抗馬としてメディアから圧倒的な期待を受ける
  ・歌唱メンバー、一番人気のメンバーの脱退発表
  ・逆風の中で2期メンバー加入。「浮世離れした正統派アイドル」から「現代的なライブアイドル」への変化
  ・2年ほど冷遇期間。地方のドサ回り。積極的に外部関係者にアクションを働きかける。ヤッタルチャン大作戦。上原浩治とのつながり。
  ・武道館
【Berryz工房・℃-ute】
 1:音楽
  ・初期モーニング娘の要素を二分し、お互いに補完し合う関係
  ・歌詞と年齢をコンセプトだけでなく、風景の細部まで合わせる
 2:戦略の特徴
  ・コンセプトに寄せるのではなく、メンバーに寄せる
  ・少女達の成長ストーリーの圧倒的蓄積
 3:ストーリー
  ・ハロプロキッズというハロプロ全盛期の極上の上澄み
  ・同期であり対照的な存在
  ・ハロプロというホームでのアイドル性と個性の長期間純粋培養
  ・アイドル戦国時代に伴うハロプロ帝国の領土拡大
  ・武道館公演
【さくら学院(BABYMETAL)】
 1:音楽
  ①年齢を限定されたグループゆえの焦点の深さ
  ②異ジャンルを取り込む際の本気度合い、気鋭の若手ミュージシャンの登用
 2:戦略の特徴
  ①『発表会』という徹底したコンセプト、握手会をしないことによる80sアイドル的天上人感の醸成
  ②養成所として割り切り卒業生を応援する体制
  ③海外音楽をオマージュした海外向けのプロモーション
  ④国内市場を早々に振り切って海外展開を急速に行うフットワークの高さ
 3:ストーリー
  ・大手芸能事務所による「Super Lady養成所」
  ・強制的な組織循環、終わりがあるからこその儚さ
  ・活躍する卒業生たち
  ・海外メタルファンからの注目を一気に高める
  ・史上最年少での武道館単独公演
 結び


論考「パフォーマンスとしてのももいろクローバーZ」 中西理 サイト下北沢通信

第1部 ダンスとしてのももいろクローバーZ
多田淳之介インタビュー
 ■SPEEDとPerfumeの衝撃
 ■Perfumeと震災以降
 ■ももクロの当て書き的振り付け
 ■Perfumeの振り付けの難しさ
 ■「ももクロの場合はよくも悪くも再現性がない」
 ■身体的負荷とパフォーマンス
 ■パフォーマンスの意味が変わる
 ■ドラマが発生するということ
第2部 演劇とももいろクローバーZ 変わりゆくももクロのパフォーマンス


「サイリウム」が表象するものとは何か 吉井紀州 サイト「紀州梅のあかしお生活」

 ■はじめに
 ■サイリュームと「サイリウム」
 ■ペンライトと「サイリウム」
 ■「サイリウム」の認識論
 ■「サイリウム」という表象
 ■「サイリウム」を通して解釈する
 ■おわりに


ラブライブ! ~2.5次元への誘い、紅白への願い~  くら サイト (音楽CDレビュー(仮))

 ■ラブライブ!とは何か
第1章 ラブライブに影響を与えたもの
 ■ラブライブの当初とAKB48
 ■ももクロ的サクセスストーリーを持つラブライブ
 ■ラブライブとけいおん!
第2章 2次元と3次元
 ■声優のアイドル化
 ■ラブライブの演出
 ■2.5次元の世界
第3章 ラブライブと紅白
 ■ラブライブの紅白出場可能性
 ■アニソンの軌跡
 ■叶え!みんなの夢!


百田夏菜子論 仙女下凡の明日 すなお サイト常夏モスクワ

 0 言ひ仰せて何かある
 1 開花した大輪の花
 2 日産『灰ダイ』事件 その道は覇道か
 3 CONTRADICTION 不均衡の均衡
 4 『コノウタ』から排除された「みんな」
 5 不易流行
 6 均衡の先へ行く
 7 「小さな巨人」百田夏菜子のジレンマ
 8 「普通」のスーパースター
 9 WWWの中心地
 10 真赤な誓い


めんどくさい夏菜子ちゃん推し座談会  
 イカサマ、くら、ごっち、しょうしょう、すなお、いし



比較アイドルグループ論―AKB48、ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学を題材として くら
0章 前書き
 ■何故この3グループなのか
1章 メンバーの増減と目標
 ■メンバーの卒業
 ■なぜこの表現になるのか
 ■表現からみるグループのスタンス
 ■グループと目標
 ■高校の部活で例える3グループ
2章 メンバー
 ■リーダー ~グループによってこ大きく異なるリーダーの役割~
 ■センター ~センターは誰?どう決まる?~
 ■メンバー同士の先輩・後輩関係 ~上下関係は存在するか?~
 ■メンバー間の衝突・仲の良さ ~ケンカを繰り返すAKB、ケンカしたことがないエビ中、仲良しはどちら?~
 ■AKB総選挙に関する意見
3章 本質とその魅力
 ■グループを代表する人物・言葉
 ■コンセプトを教えてくれる曲
 ■キャッチフレーズ
 ■補足 ~モノノフはわかってくれない~
終章 後書き
 ■AKB48は新陳代謝出来るのか?
 ■パフォーマンスへの回帰~ももクロ化するAKB~
 ■AKB48の伝統を破壊する島崎遥香
 ■ももクロ最後の壁「続けていくこと」
 ■ライブパフォーマンスと不満
 ■「8人」のエビ中の行く末は?


学生であることの強さ 私立恵比寿中学MV考察 さかもと

 ■ 人間性を捨て去ったももクロ 中学生に留まるエビ中
 ■ 『大人はわかってくれない』というつながり
 ■ 『手をつなごう』という寓意性


「それでは聞いて下さい、ももいろクローバーZでコノウタ」 平成ノブシコブシ徳井健太 サイト「平成ノブシコブシ」徳井健太の爆撃



「目指す側」から「目指される側」へ
 ももクロと地下アイドル/ご当地アイドル
 ばるすた

第1章 ももクロとアリスプロジェクト
 ■腕利き揃いの作家陣
 ■常設劇場の強み
 ■ももクロを超えるゲリラ戦術 【アリス十番】
 ■超個性派集団 【スチームガールズ】
 ■OZの物語 【OZ(オズ)】
 ■候補生という刺客 【ぱー研!】
 ■不屈の大増殖 【スライムガールズ】
 ■死地に飛び込む戦士 【仮面女子
 ■アリスプロジェクトが閉塞していくアイドル界を打開する
第2章 ももクロとご当地アイドル
 ■水戸から首都圏へ 【水戸ご当地アイドル(仮)】
 ■福島復興への想い 【Loveit!】
 ■いわき市から世界へ 【アイくるガールズ】
 ■ご当地アイドルムーブメントに思う


2&インタビュー ライブアイドルは泣きながら走り続ける  2&公式サイト


劣化した社会にこそ魂が宿る ももいろクローバーZの可能性と不可逆性 さかもと

 ■ 第1章 ももクロ現象とは何か
  ・鵺みたいなもの
  ・高城れにと般若心経
  ・大人と子どもが同居する高城れに
  ・高城れには悲しみの記憶と共に踊る
  ・モノノフはDD化する
  ・ファンとの同一性を強調するももクロ運営
  ・再物語化の強化
  ・「ももいろクローバーZとは高城れにの事である」
 ■ 第2章 地下アイドルから見るももクロの異常性
  ・ライブアイドルとしてのももクロ
  ・ももクロファンはヲタ芸と思わないままヲタ芸を打つ
  ・ピンクレディー的卑猥さ
  ・言い訳できないハロプロと言い訳できるももクロ
  ・ガチ恋が成立し得ないももクロ
  ・「ドルヲタは山頂ではなく高原を開拓すべきである」
  ・学生性を捨てたももクロと学生であり続けるエビ中
  ・秋元康という大河
  ・『恋するフォーチュンクッキー』を作れないももクロ
  ・この時代がももクロを作り上げたのか
 ■ 第3章 ももクロがインフラになる日
  ・ヴィレヴァンから見る爆発的人気獲得と地方への広まり方
  ・『あまちゃん』とマキシマムザホルモンとももクロがなぜ流行るのか
  ・ももクロは宗教ではなく祝祭である
  ・ファン同士が仲良くなるということ
  ・なぜ布袋寅泰が君が代を演奏したのか
  ・非血縁社会日本の救済としてのももクロ


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ももクロ評論誌『アイドル感染拡大』ようやく販売サイト始動です 

いろいろありましたがようやく『アイドル感染拡大』のデータがすべて揃いました。
データ入稿し印刷してもらう段階です。
9月29日以降発送できるかと思いますので、ご注文された方はもう少しお待ちくださいませ。

アイドル感染拡大の販売サイト

こちらでお申し込みできます。

参考画像も作っていただいたんですが、これがかっこ良すぎてむせました。

第1弾「世界が感情を取り戻す」はももクロについて語る熱量がものすごく文字数が多くなってしまいました。
中身がバラバラなのでデザインは統一感を持たせました。それと全体的に「ももクロの本らしさ(5色使うなど)」を無くして欲しくって、評論誌っぽいイメージをお伝えしてデザイン制作をしていただきました。
原稿の順番もかなり意識しました。
まず僕の原稿でももクロについてのまとめ、目次みたいな感じにし、最後のなんくろさんの原稿で東京から地方へと広がっていくようなイメージになればいいな、と。

表紙のデザインも、日本が5色の光りに満ちていますが、他の国はまだまだ5色の光が足りない、こんなデザインにしていただきました。


第2弾はセカンドアルバムについての解説本を読みたかったので音楽に詳しい人をメインに執筆をお願いしました。
「音楽論」という一貫したテーマがあったので、ページデザインなどはめちゃくちゃにしていただきました。
「イルミナーレ」というのがこれだけでは何を指しているのかわかりづらいと思い、表紙はわかりやすく5色を強調してもらいました。
ちなみに「イルミナーレ」とは「天からの啓示」みたいな意味合いです。宗教チックにしてみました。


そして第3弾ですが、「モデルを表紙にしたいな」とデザイナーさんと話してまして、いろいろ考えたのですが、よくライブに行っている2&さんにお願いしてみよう、となりました。社長さんも気さくな方ですし。
(地下アイドルの現場に行けばわかりますが、事務所の社長と雑談する機会は結構あります。なので顔見知りにはすぐなれると思います。もちろん物販の時にアイドルさんとお話する機会もあるので、お互い人柄なども理解しやすいのです)

それと、タイトルに「感染拡大」とあり、おどろおどろしいイメージなので、表紙はさわやかにしたかったのです。

一部で「趣味を利用しやがった」とか「半ヲタだ(運営のように振る舞うファンのこと。嫌われやすい)」とか言われていますが、2&さんをモデルに起用したのはもちろん理由があります。お願いしやすかった、以外に。

・ももクロのカヴァーをしていること
・ももクロ初のホールコンサート日本青年館のステージに立ったこと
・『ネガポジmonster』で観客が手をつなぐ振り付けがあるのですが、これが『アイドル感染拡大』のイメージにぴったりだったこと
(ももクロにはファン同士で手をつなぐ曲がありません。『渚のラララ』では肩を組むように夏菜子ちゃんが煽ったりしますが、ほぼやらない曲ですし。ももクロの曲にもエビ中の『手をつなごう』みたいにファン同士で手をつなぐ曲ができればいいな、と常々思っているのです)

これらがあったのでお願いしました。
後付けじゃないよ。


ということで以前まえがきと目次を掲載しましたので、今回は特別にあとがきを掲載します。
ぜひご購入の参考にしていただければなと思います。





あとがき

『アイドル感染拡大』をお読みいただき、誠にありがとうございます。
この本の製作は徳井さんが「(ももクロ論壇に)書きますよ!」と声を掛けてくださったことで動き始めました。そしてたくさんの方々のご協力があり完成しました。こちらからの一方的なお願いに二つ返事で快諾してくださったみなさまには本当に感謝しています。

僕はももクロこそが世界を平和にするだろうと思っています。そしてアイドルってなんてすごいんだと思っています。ももクロが多くの人々をアイドルにし、そのアイドルがまたアイドルを生む。アイドルが広まっていく中心地にももクロがいる。そんな想いをタイトルに込めました。
この本で取り上げたアイドルグループはどこもすごいのですが、なぜかももクロだけが頭一つ抜け出し国立競技場や日産スタジアムでのライブを行い会場をファンで埋め尽くしました。今やアイドルの枠を超えてもはや生態系と化したAKB48と並び称される存在です。
ももクロが時代を作ったのか。それとも時代がももクロを召喚したのか。おそらくこれらが複雑に絡み合った結果が現在の状況なのでしょう。
人類が誕生した奇跡を「海に時計の部品を投げ入れ、波の動きで時計が完成するぐらいの確率」と例えることがあります。ももクロ現象もこのようなことなのかも知れません。すなわち「ある場所に素敵な女の子を集め、激動の社会で完成された何か」がももクロなのではないでしょうか。
ももクロを見て「奇跡としか思えない」という思考停止に陥ってしまうのは、そこに果てしない、計算不可能と思わせるほどの、人智を超えたものを感じ取ってしまうからでしょう。その停止した思考を一歩でも前に進めるためにこの本が使われたら嬉しいです。

この場を借りて、順番にこの本の感想を書いていきたいと思います。
まずこの本がどうやってできたのかについて。冒頭でも書いたように徳井さんが声を掛けてくださったのですが、実は第二弾のあとすぐに着手し、2014年の頭で完成している予定でした。タイトルも『アイドル感染拡大』で行くと決めており、内容はももクロ評論は僕だけにして、あとは様々なアイドルについて取り上げる予定でした。ですが第二弾の売れ行きが思わしくなく、なかなか第三弾に着手できないまま話が流れていきました。
第三弾製作再始動にあたり、執筆陣にお願いしたことは「ももクロ」という単語を一回以上使うことのみです。『アイドル感染拡大』としたのは、ももクロはアイドルの最大公約数なのではないか、という直感と、ももクロからすべてが始まってみんなが笑顔になるのではないか、という期待を込めたからです。
ももクロを語る上で、ももクロだけ語るのではなく、もっと広い視点でももクロを見つめる必要があると常々感じています。なので執筆陣にはなるべく制限を設けず、出来る限り思うがままに書いていただきましたが、通して読むと「ももクロって結局なんなんだ」という凄みに撃たれたはずです。お読みいただいた方はどのように感じたでしょう。ぜひご意見いただきたいです。

・にるそん考2 アイドル戦国時代の俯瞰的な分析
にるそんさんは第一弾でも膨大なデータに裏打ちされた説得力あふれる文章を書いていただきましたが、今回もかなりおもしろいものを書いてもらえて良かったです。いろんなアイドルグループの類似点や相違点などがわかりやすく書かれているので、この本の一番最初に持ってきました。スタートに立てる道しるべとしてもとても重要な原稿となっています。

・論考「パフォーマンスとしてのももいろクローバーZ」
中西さんはとてもお世話になっている方に紹介していただきました。僕は舞台というものを数えるほどしか見たことが無いため、舞台の評論家にももクロを語っていただけるのは新たな視点が獲得できたかなと思います。ライブというのはその時にしか見ることができない、もう同じことは起きない、という焦燥感みたいなものや爆発力みたいなものがあると思います。ももクロのライブになぜ惹かれるのか、というのが納得できたかと思います。ももクロの舞台見たいですね。

・「サイリウム」が表象するものとは何か
紀州さんは第一弾から全部に参加していただきました。今回の「サイリウム」についての論考はとても読み応えがあり、とても映画的というか、読んでいて胸が締め付けられるような感覚になるかと思います。ほんの些細な書き間違いにしか思えなかった「サイリウム」と「ペンライト」ですが、紀州さんの文章を読んだあとではそこに大いなる意志が組み込まれているようにしか思えません。とてもおもしろく刺激的な文章です。

・ラブライブ! ~2.5次元への誘い、紅白への願い~
くらさんのラブライブについてのコラムですが、飲んでる時にアニメを勧められ、さほど興味を示さない僕に「ラブライブとアイドルについてで原稿書けますよ!」とふっかけてきて、「じゃあお願いします!」という感じで収録することにしました。いろいろ勢いでやってます。「アイドルマスターはハロプロで、ラブライブはスタダなんです」と言うのを聞いておもしろそうだったので書いていただきました。

・百田夏菜子論 仙女下凡の明日
すなおさんは第一弾に続き夏菜子ちゃんについて書いていただきました。飲んでる時に「第二弾はすなおさんが書いてくれなかったので売れませんでしたよ」と笑いながら言うと、「そりゃそうでしょう」とか言ってきたのでむかついて執筆を依頼しました。おかげさまでとてもおもしろいものを書いていただけました。編集長はグッとこらえることも必要なんだと学びました。

・めんどくさい夏菜子ちゃん推し座談会
夏菜子ちゃん推し座談会ですが、基本的に堅苦しい文章ばかりになる本なので、息抜きというか、思いっきりくだらない企画を入れたいな、と思って開催しました。ここには載せ切れませんでしたが座談会の内容はほんとくだらなくておもしろかったです。ももクロの飲み会っておもしろいですよね。座談会の企画意図はほぼ達成しませんでしたが、バカバカしい飲み会を再現できていれば大成功です。本誌責任編集の立場として、ももクロちゃんがあんな単語言うはずありません!と言っておきます(笑)。

・比較アイドルグループ論―AKB48、ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学を題材として
くらさんは第二弾でお世話になりましたが、ほんと変態的に音楽を聞いている方で尊敬しますが、音楽に疎い僕は彼が何を言っているのかわかりません。今回は純粋にファンの目線でももクロとエビ中とAKB48について書いていただきました。三者三様という感じで違いがわかりやすく書かれているのでとても参考になると思います。

・学生であることの強さ 私立恵比寿中学MV考察
僕が書いたエビ中のMVについてですが、ほんとエビ中っていろいろおしゃれで羨ましいんですよね。センスだけで言うと完全にエビ中ファンです。執筆のために何度もMVを見返したのですが、涙を禁じえないですね。禁じる必要も無いですけど。

・「それでは聞いて下さい、ももいろクローバーZでコノウタ」
徳井さんはほんと素敵な方で、こちらからお願いした修正案などもしっかり汲み取ってくださるし、何より締切を守ってくださいます。お仕事でお忙しいでしょうに。そしてお読みになった方はご存知でしょうけど、ももクロファンとして「え!マジで!」となるようなことも書いてくださいました。

・「目指す側」から「目指される側」へ
ばるすたさんも第一弾からお世話になっております。今回はアリスプロジェクトと地方アイドルについて書いていただきました。スターダストはももクロを筆頭に様々なアイドルグループが出てきており、それがジャニーズ化とも読み取れるわけですが、アリスプロジェクトもそういう構想なんでしょうか。ご当地アイドルの可能性についても今後注目していきたいですね。

・2&インタビュー
表紙のモデルを務めていただいた2&のSakiさんとプロデューサーさんを交えてのインタビュー記事です。モデルをお願いしたらすぐに快諾してくださって、Sakiさんも「私でいいんですか?」とか言ってて、「いやいやこちらこそすみません」みたいな恐縮合戦でした。
ステージに立つライブアイドルとしての考えやアイドル運営から見たももクロについてなど、大変興味深いお話を伺うことができました。Sakiさんもプロデューサーさんも話しているとこちらが元気になるような人物で、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。

・劣化した社会にこそ魂が宿る ももいろクローバーZの可能性と不可逆性
最後は僕の原稿ですが、最後までお読みくださった方には本当に感謝いたします。ありがとうございます。ももクロがいかにすごい存在なのかをこれでもかと誌面にぶつけました。ももクロに感染した僕の最大限の感謝のしるしです。

諸星大二郎先生の『生物都市』という短編漫画をご存知でしょうか。詳しい内容はぜひ原作をお読みいただきたいので伏せますが、あそこに描かれているのは全部がひとつになるディストピアです。僕はそこにユートピアを見出しました。全員がひとつになることがユートピアになりうる可能性。それがももクロなのではないか、と。
ももクロにハマる前はアイドルオタクは嫌悪の対象でした。でもいざなってみるとなんておもしろい世界なんだ、と毎日発見の連続です。感染してみないと本質がわからない。ディストピアに見えていたけど自分がその環境に入ってみるとユートピアだった。このモチーフは藤子・F・不二雄先生が『流血鬼』という短編でも描いています。主人公以外の全員が吸血鬼になってしまった場合、人間のままでいるのが幸福か、吸血鬼になってしまうのが幸福か。
まだまだアイドルやアイドルオタクに嫌悪の目を向ける人が多いようですが、彼らもアイドル感染するような社会はもうすぐそこまで来ているでしょう。なぜなら80年代の「アイドルと言えば松田聖子」というようなみんなが共通して思うアイドルは今の時代存在しないからです。「アイドル」と口にした時に、それがライブアイドルなのか、グラビアアイドルなのか、男性なのか女性なのか、女子アナなのか、スポーツ選手なのか曖昧だからです。さらに言うと、アイドルが歌う曲のジャンルも多種多様で、すべてのジャンルを網羅しているのがアイドルだと言っても過言ではありません。例えばロックバンドが80年代アイドルソングを歌ったら「ロックじゃない」と批判されるでしょうけど、アイドルがロックを歌ったらそれは「アイドル」というジャンルが再定義され認識されていきます。
このように、多くの人が知らず知らずの内に「アイドル」に感染していくのです。

この本は様々なアイドルについて取り上げました。日本の女性ライブアイドルのほんの一部しか取り上げることはできませんでしたが、いろんなアイドルを知るきっかけ作りにはなったかと思います。
「感染」はいつの間にか起きます。洗脳という予防接種を受けていても、日々進化し続けるアイドルウィルスは様々な形に変化し、思いもよらない時に、しかも気付かない内に襲いかかってきます。もはや洗脳予防接種などでは対処しきれないのです。
アイドル感染拡大により価値観を転覆させ、新たなステージへ。
僕には「推しが決まるのは事故に遭うようなものだ」という持論があります。自分の意図とはまったく別の次元で決定してしまうのが「推しメン」だと思うのです。このように、社会的通念を飛び越えて感染し、予期せぬ事態に巻き込まれる形で推しメンが決まってしまうアイドルに、僕はとてつもない可能性を感じます。アイドルから学ぶ機会が増え、様々なものと巡り会うチャンスが増え、そして誰かを想う気持ちが養われていく。日本はまだまだ捨てたもんじゃない。それどころか世界が羨むものとなるのです。かつてモーニング娘。が『LOVEマシーン』で歌ったように。

最後に、この本は多くの人々に助けられて完成しました。この本が完成したという事実が「アイドル感染拡大」の一つの実証例でもあるのです。携わってくださったみなさんには本当に感謝しています。みなさんがいるからアイドルの力をどこまでも信じることができました。
この本をこれまで協力してくださったみなさんと、そしてこれからアイドルに感染し笑顔を広めていくであろう人々に捧げます。


ももクロ論壇責任編集 さかもと



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ももいろクローバーZ 終わりなき補論
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  ・いのちのあれこれ
  ・哲学史を壁に叩きつけろ

テーマ: 哲学/倫理学 - ジャンル: 学問・文化・芸術

ももクロ評論同人誌『世界が感情を取り戻す ももいろクローバーZ論』 




世界

完売御礼!本当にありがとうございました!

9人の執筆陣による、164ページ、約350000字の大ボリューム!

お問い合わせはこちらまで。
「予約したけど何日待っても返事来ない!」という方もお手数ですがご連絡いただけるとありがたいです。
hypersoniccooldive☆gmail.com(☆をマットマークに換えてください)


ツイッターアカウント @sakamoto444
世界が感情を取り戻す
■ 第1章 ももいろクローバーZは我々に何を残す
● 「敵」とは何か
● 『魔法少女まどか☆マギカ』と乃木坂46の抜け出せない世界システム
● 「公式ライバル」という矮小化されたシステム
● AKB48に対する乃木坂46と、ももいろクローバーZに対するUFIの比較
● 鹿目まどか不在の乃木坂46の抜け出せなさと、鹿目まどかをそもそも必要としないUFIの楽しい力強さ
● 90年代ジャンプバトルVSゼロ年代バトルロワイアル
● 絆コストと良き社会システムの運営について
● アイドルはみんな全力である
● 我々は一人ではない
● 不完全さが輝きを帯びる
● 揺れる身体 導引される身体
● 人生を背負う覚悟 [ マネージャー ]
● 批判を聞かない姿勢 [ 演出 ]
● 憑依し見ている者を同化させる力 [ ダンス ]
● 直情的・短絡的・特異的  [ 楽曲 ] 

■ 第2章 世界が感情を取り戻す
● 絆コストをかけるアイドル
● ファンは増え続けている
● 戦闘美少女:百田夏菜子の身体性による表出
● 物語が輝度を加速させる
● 百田夏菜子は自身を写す鏡である
● 泣き虫返上:引き継ぎし者 玉井詩織の振幅
● マネージャー川上アキラの意匠
● 「甘えん坊」という名の調整
● あかりんを引き受けた泣き虫少女
● 玉井詩織の二重螺旋
● ももいろクリスマス2012での「脱あかりん」という決意表明
● 脱人称化という覚悟:ももクロのアイドル佐々木彩夏の悲哀性
● 「箱入り娘」が望むべき子に育たないという逆説
● なぜあーりんは愛されももちは蔑まれるのか
● 「佐々木彩夏」という悲哀
●  魔法少女作品から読み解く佐々木彩夏
● 泣き虫で負けず嫌いな小さな小さな大巨人:有安杏果の物語性
● なぜ我々は有安杏果に惹かれるのか
● 『ももドラ』有安杏果回考察
● 腹筋回数から読み解くももいろクローバーZ
● 有安杏果パートから読み解く成長物語
● 幼児性を持つシャーマン:高城れにの脆弱性
● メンバー最年長でリーダーを任された子供
● 伝達するために必要なものを兼ね備えた美少女
● 高城れにの繊細なはかなさ
● 週末ヒロインから毎日ヒロインになった覚悟
● 進化スピードと変わらない核
● Z伝説 終わりなき革命

■ 第3章 柔和な革命
● 紅白の向こう側
● ファンが増えることによる不安
● ももいろクローバーZが乗り越えるべきはももいろクローバーZである
● AKB48の宗教システムについて
● アンチの取扱説明書
● AKB48グループ大量解雇とももクロの早見あかり脱退
● 接触イベントによる近接性
● 一曲一曲を研ぎ澄まし続けるももいろクローバーZ
● 紅白の向こう側とは過去との決別である
● ももクロが新たなインフラとなる
● 社会システムと宗教システムの大きな違いとは何か
● ももクロの社会性


2.ももいろクローバーZについての考察1
にるそん@ohtanilson
3.百田夏菜子論―世界のポラリスとして―
すなお @continued_sunao
妖刀:有安杏果論
からふね @karafune_mcz
5.ももクロについて語るときに僕の語ること―ライブアイドルとしてのももクロ論
YOICHIRO @yoichiro__k
6.モノノフ論
ばるすた @fivevirgostars
7.現場・物語・ファン―極私的ももクロ論序説―
紀州梅 @yu_k68
8.ももクロに託された健全性への願い
だん。 @dadandanda
9.地方から見たももクロ論
なんくろ@nan_kuro



テーマ: 日記 - ジャンル: 日記

ももクロ評論同人誌『ILLUMINARE ももいろクローバーZ音楽論』 



イルミナーレ表紙


【イルミナーレの通販は終了いたしました。誠にありがとうございました。】



●まえがき


「ももいろクローバーZとは一体なんなのか」。この問いに挑み続け第二弾の刊行となりました。前回はももいろクローバーZについての総論と、その刊行当時までのももクロの歴史を記す意味合いがありました。ももクロの成長スピードの異常さに「今すぐにでも出さねば」という想いに駆られたのです。
今回はセカンドアルバムを受けて同人誌制作を決意しました。ももクロは何か新しいことを始めると必ず賛否両論が巻き起こります。僕は賛否両論が起こる事に対して興味がありますが、さらに「賛成している人たちの無自覚さ」「否定している人の無自覚さ」にも興味があります。その部分を解明することでももクロとは何かという問いに一歩近づけるのではないかと考えているからです。
ももクロの音楽は特殊であり、音楽面でも強く惹きつけられている人たちがいます。音楽の知識が豊富な方も惹かれるし、あまり音楽を聴いてこなかったような人たちもなぜかももクロの音楽が耳にこびりついて剥がれないということが起こっています。

「ももクロの音楽って一体なんなのか」。今回の同人誌のテーマはこれです。

ももクロの音楽は聞ける音楽でもあるし体感できる音楽でもあります。それを踏まえできるだけ多面的に語り、さらに楽曲ファンや音楽の知識が無い方でも読むに耐えるようなものを目指しました。
そのためできるだけ難解な音楽用語を避け、わかりづらいと思われる単語は注釈で補うようにしてあります。ももクロ自身が難しい言葉を語らずに我々の胸を打つのに学び、この同人誌でも難しい表現ではなく平易な表現を用いました。
この本を読み終えることでももクロの音楽の深みに気付くことでしょう。
タイトルの『ILLUMINARE(イルミナーレ)』は「天からの啓示」という意味を込めて付けました。ももクロの天啓に撃ち抜かれたみなさまが、さらに思考を深めていただけたら執筆陣一同望外の喜びです。


ももクロ論壇責任編集 さかもと




●あとがき



ももクロ論壇第二弾『ILLUMINARE』をお読みいただきありがとうございました。
この場を借りて「ももクロ論壇とは何か」について言及したいと思います。そうすることで二冊の同人誌の見え方が変わり、さらにはももクロに対する構えも変わることを願っています。

ももクロ論壇の基本姿勢は「ももクロを語り継ぐ」「ももクロの凄さを書き記す」「アイドル論で論壇を覆す」という三つです。

第一弾『世界が感情を取り戻す ももいろクローバーZ論』で展開したように、ももクロは強烈な物語性がありそれを伝承していくことでファンを拡大してきた。念願だった紅白出場を果たし、一気に全国区へと広がりを見せる時にこれまでの総括として様々な視点からのももクロをまとめてみました。
正確にはあえてまとめなかった。本としては読みづらかったと思いますが、ももクロの衝撃は理路整然とは語れない、というのを40万字に及ぶ文字の洪水で訴えてみました。
ただそれでは本当に読みづらくなってしまうので、最初の方でももクロについての総論を書き、個人論に言及し、ライブレポートで臨場感を味わっていただき、今後どのように広がっていくのか、という流れを意識した構成にしました。
ももクロ論壇の基本姿勢である「ももクロを語り継ぐ」「ももクロの凄さを書き記す」という二点については及第点だったと自負しております。
無粋ながらあえて言いますと、「ももクロの凄さ」を伝え切ることが不可能なのは十分理解しています。それでも不可能性にあえて挑み40万字の本を作らせてしまう凄み。感動を失い斜に構えている者たちを奮い立たせ全力にさせてしまうももクロの凄さ。これらが訴えずとも重厚なデザインの本からにじみ出てしまうのを期待しました。
さて「アイドル論で論壇を覆す」という姿勢ですが、これについてはまだまだ途上です。そもそも論壇とはなんでしょうか。僕の中では『朝まで生テレビ』に出そうな人たちが持論を展開し合い決して混ざり合うことの無いイメージです。
彼らは一様に堅苦しい表情をしており、見ている誰もが楽しめません。参加する気も起きずますます言論人は孤立化し、お山の大将とでも言いますか「言ってることがわからない奴は馬鹿だ」という構えを見せます。
僕はそんなつまらない空間をぶち壊したいのです。
経済学だけ語っても経済が回らないように。心理学だけを語っても誰も救われないように。社会学だけを語っても社会が良くならないように。語っている者だけが気持ちいい空間はいりません。
それよりも僕の願いは、アイドルについて語っているはずなのに、なぜか社会が幸福に満ちていく、というものです。僕はその可能性をももクロに見出しました。
ももクロについて様々な視点から語ることでももクロという存在のあり得なさに撃ち抜かれてもらい、さらにはももクロが存在するこの社会の凄さについても思考して欲しい、というのが「ももクロ論壇」の狙いです。
その意味でももクロは宗教足りえません。宗教というのは社会よりも大きい存在であり、教徒は社会に生きるのではなく宗教に生きています。ももクロが宗教だとしたらももクロのために生きるが社会はどうなってもいい、ということになります。それでは社会が成立しなくなり、結果的にももクロもこの社会に存在できなくなってしまいます。
そうではなく、ももクロが存在できるこの社会の素晴らしさに気付き、良き社会を継続させることの重要性を知っていただく。
これらがももクロ論壇の基本姿勢です。

『ILLUMINARE ももいろクローバーZ音楽論』はももクロの音楽に重点を置きました。
音楽というのは体感であり、言語化不可能であり、だからこそ我々を揺さぶります。ももクロの音楽の特殊性を知ることで聞く姿勢を変えていただければな、という想いで作りました。
この本を読み終えたみなさまに、ももクロ現象を読み解く上で音楽も外せない一要因だ、と改めて思っていただけたことと思います。そしてももクロ音楽の楽しみ方のバリエーションが増えたかと思います。
聞いた瞬間に好き嫌いが決まってしまうのは仕方ありませんが、嫌いだけど実はすごい曲だったのか、という気付きを得て欲しい。押し付けのように思われるかも知れませんが、楽しげに「これスゲースゲー」と笑ってる者たちの意見に少しでも耳を傾けていただけたらな、と思います。

最後に、この本は多くの方に助けられて出来上がりました。そして前著の感想をいただいたことも大変励みになりました。すべてが「無駄じゃなかった」です。ただ本ばっか読んでるだけで沼にズブズブと沈んでいた僕を「ねじ曲がりもがいた時間も未来の方へ」向かっていると激励し引き上げてくれたももクロちゃんに最大の感謝を送ります。


ももクロ論壇責任編集 さかもと



『ILLUMINARE ももいろクローバーZ音楽論』

140ページ A5判(クイックジャパンサイズです) 


「ILLUMINAREももいろクローバーZ音楽論」に関するお詫びと訂正

P125 「編集後記」に関しまして誤った箇所がございました。

誤)
「ゆん
 音楽とは趣味、嗜好の世界であり (中略) 一人でも出てきたら本望です。」

正)
「ゆん
 僕は映画も音楽も本も、それを見たり聴いたり読んだりすることはもちろんですが、そのあとそれについて語り合うこと、他人の意見を聞くことが何より好きだったりします。人のレビューや感想を読んで「確かにそうだなぁ」「これは違うんじゃないか」なんていろいろ考えているうちに、自分自身の意見や感想も固まってきて、よりその作品に対する"想い"が強くなります。今回はクロスレビューという形で、計32曲
について書かせていただきました。3人がそれぞれの感性で書いたものですから、評価が分かれている曲もあるでしょう。中には僕のレビューに賛同できなかったり、不快になる人もいるかもしれません。でもそうやって僕のレビューを触媒にして、ご自身のももクロへの想いを再確認していただけるのであれば、それは意味のあることだと思うのです。こんな素敵なチャンスを僕に与えてくれたくらさん、さかもとさんに感謝いたします。そして最後に、原稿の提出が遅くなって皆さんに迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした。時間はかかってしまいましたが、書いていてとても楽しかったですし、僕自身もさらにももクロへの想いを深めることができました。」

読者の皆様、ならびに関係者の皆様へご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。

平成25年10月13日
ももクロ論壇




【同人誌の内容】

今回はももクロの音楽に焦点を当ててみました。
原稿の他にアルバムとB面C面曲のレビューが目玉です。
特にファーストとセカンドの26曲は3人のレビュアーによるクロスレビューです。
必ずや新たな発見があるでしょう。
音楽好きはもちろん、音楽に詳しくない方にも読みやすい内容となっておりますのでぜひご覧下さいませ。

以下目次


『ももいろクローバーZの音楽』 (くら執筆)

第1章 ももいろクローバーZの楽曲の特徴
◆言葉の面から
■歌詞のレパートリーについて
■歌詞の特徴
・固有名詞が入っていたり、タレントの特徴に特化していること
・性的な表現を極端に避けている
◆音楽の面から
■楽曲のレパートリー
■単純な繰り返しを避ける
・1番と2番でメロディを変える
・メロディは同じでも、伴奏を変える
■一般的な楽曲構成と異なる曲が多く存在する
『コノウタ』・・・勝負球はストレートど真ん中
『Z女戦争』・・・いつもより串が長い焼き鳥
『BIRTHφBIRTH』・・・生まれ変わり続ける蝶のように
『空のカーテン』・・・3曲分のお仕事
・Cメロの肥大化
・少々道に外れて~現代のソナタ形式『走れ!』~
■ラップともセリフとも言えない、掛け声のようなパートが存在する
■音、楽器が多い
■効果音の挿入
■カラオケで歌えない
・AKB48とももクロの方向性の違い
第2章 ももクロは何故売れたのか
■J-POPにとっての90、00、10年代
・90年代~CDミリオンヒット&カラオケ全盛期~
・00年代~音楽不況とITの波~
・10年代~アイドルの時代~
■動画サイトとmp3プレイヤーに合った音楽
■2つの動画サイト
・ニコニコ動画について
・YouTubeについて
■ももいろクローバーZの音楽と動画サイト
・ニコニコ動画的な曲展開を持つももクロの音楽
・「飽きない」ことが大切なmp3プレイヤーに適したももクロの音楽
・YouTube的多様性を持つももクロの楽
■まとめ
第3章 ももクロが創る未来
◆ももクロはJ-POPを変えられるのか
◆あとがき



『僕等のセンチュリー~空のカーテン論 外への慈愛 内への決意』 (ばるすた執筆)

■なぜいまこの2曲を?
■制作された当時の状況
・2012年12月24日にもたらされたクリスマスプレゼント
■僕等のセンチュリー
クリスマスはみんなを笑顔にする非日常
クローバーの意味に対しての新たなる言及
「きれいごと」を、笑って言ってのける意味と強さ
■空のカーテン
・「空のカーテン」、その魅力
・メンバーそれぞれの魅力
・高城れにのウィスパーボイス
・玉井詩織の安定と変化
・有安杏果の魂
・佐々木彩夏の成長
・百田夏菜子の切なさ
・内側、自分への応援歌
■終わりに



『MIRAIE:女川現場備忘録』 (紀州梅執筆)

はじめに
〈動き出すよ 君の元へ〉
〈我らの世界はまだ始まったばかりだ〉
〈頑張っChai Maxx〉
〈笑顔と歌声で世界を照らし出せ〉
おわりに



『ももクロは歌謡曲の荒野を目指す』 (なんくろ執筆)

・歌謡曲とは
・豊穣な音色の歌謡曲
・演奏の少人数化と作曲者の膨張
・大人数演奏のレフュジア
・アイドル冬の時代と新しいアイドルブーム
・キングレコード
・ももクロの楽曲 - アイドル・ソング期
・ももクロの楽曲 - アクロバティックな楽曲期
・ももクロの楽曲 - エンターテインメント期
・ももクロの楽曲 - 宮本純乃介期
・5TH DIMENSIONの衝撃
・コンサートの位置づけ
・生演奏の力
・荒野を豊穣の世界へ


『覚醒から覚醒せよ』 (さかもと執筆)

第1章 5人は色を失い我々は意思を剥奪される
 ● はじめに
 ● 緑色の海は現れない [日本ガイシホール公演]
 ● 「春の一大事」という形式を捨てる運営
 ● ももクロは分断の歴史
第2章 バトルと次元上昇の二重螺旋
 ● 自己紹介と非自己紹介
 ● 脱原発と瓦礫のアレゴリー
 ● 無限の愛と天元突破グレンラガン
 ● バトルと次元上昇の二重螺旋
第3章 覚醒から覚醒せよ
 ● 真・春の一大事2013
 ● 百田夏菜子監督の苛烈さ
 ● 玉井詩織監督の俯瞰感覚
 ● 佐々木彩夏監督の突出
 ● 有安杏果監督の慈愛
 ● 高城れに監督の救済
 ● 輪廻ではなく螺旋





テーマ: ももいろクローバーZ - ジャンル: アイドル・芸能