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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

「愛のむきだし」を見て [2009年02月04日(水)] 

■ ゼロ教会に迫る-「愛のむきだし」感想に代えて-

園子温監督の映画「自殺サークル」「紀子の食卓」「愛のむきだし」には、共通してある組織が描かれる。
「愛のむきだし」にて明らかとなったその組織とは、日本に50万人の信者がいるとも噂されている新興宗教「ゼロ教会」。

以下の文章は上記3作の内容に深く触れネタバレを含むので、作品をご覧になってない方は了承の上お進みください。
未見の方にもわかるように最低限の説明をしながら書き進めます。


まずはそれぞれの作品のあらすじを。

「自殺サークル」(2002年公開) 出演、石橋凌、永瀬正敏、さとう玉緒、他

新宿駅で54人の女子高生が電車に飛び込み自殺をする。
自殺した少女たちは皮の一部がそぎ落とされていた。
そしてそれらが帯のようにつなげられ、ロールのように巻かれた状態で発見される。

アイドルグループ「デザート」と、咳き込む子供の声で告げられるフレーズ「あなたはあなたの関係者ですか?」という言葉の謎。
謎のサイトと自殺クラブの存在。

謎が謎を呼ぶストーリーは、「自殺サークル」のサイドストーリーでもある「紀子の食卓」へと続きます。

「紀子の食卓」(2006年公開) 出演、吹石一恵、つぐみ、吉高由里子、光石研、他

女子高生の紀子は謎のサイト「廃墟ドットコム」と新宿駅の女子高生集団自殺事件の関係を知り、そのサイトに深くのめり込む。
その後家出をした紀子は東京に行き、「廃墟ドットコム」で知り合った上野駅54というハンドルを持つ女性クミコと出会う。
クミコはレンタル家族の仕事をしていて紀子をその組織に引き込む。
本物の家族ではなく擬似家族でしか人間らしい振る舞いができなくなった紀子と、それを追って家出してきた妹のユカ。家族を再生させようとする父親の徹三。
「家族とは何か」を突き付ける衝撃作。

「愛のむきだし」(2009年公開) 出演、西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ、渡部篤郎、他

敬虔なクリスチャンである父と母に育てられたユウは、幼い時に聖母のような母を亡くす。
母はユウに「マリア様のような女の子と出会ったらお母さんに紹介してね」と言い残す。
妻を失い神父となったユウの父テツはカオリという派手な女と出会い、やがて捨てられる。それをきっかけに執拗に息子ユウを責め立てる父テツ。
神父であるテツに懺悔するため、ユウは罪作りの為に盗撮の道へと突き進む。母との約束であるマリアと出会うために。

盗撮、新興宗教、女装、レズビアン、変態。様々が交錯し怒涛の237分はラストを迎える。


■ 新興宗教団体「ゼロ教会」とは何なのか

「紀子の食卓」に心酔し長い感想文まで書いてしまった僕は、やはり「愛のむきだし」についても何か書くだろうと思ってました。
なんだけど今いちピンと来ない。泣けない。
おそらくそれは僕の性格の問題で、「紀子の食卓」が描く「すべての者は自らの役割を自覚して生きろ」というメッセージに強く惹かれるが、「愛のむきだし」が描く「発狂するほど人を愛せ」というメッセージには惹かれない、というだけな気がします。

僕が「愛のむきだし」で惹かれたのはゼロ教会という新興宗教団体です。
「自殺サークル」と「紀子の食卓」に描かれていた謎の組織が明らかになった。
そして「紀子の食卓」でつぐみが演じていた位置には、安藤サクラというとてつもない女優がちゃんと立っていた。
どこかで見たことあるけど誰だかさっぱりわかりませんでしたが、映画を見た後で色々調べてみたら、俳優の奥田瑛二の娘なんですね。
しかもフジテレビのドラマ「Room of King」の銀行員の役だったみたいです。それで見た事あるって思ったのか。

つぐみも凄かったけど安藤サクラも凄い。ド凄ぇ。


「自殺サークル」では人々を自殺に追い込んでいるように見える謎の組織。自殺クラブと世間からうわさされていた。
少女アイドルグループ「デザート」のバックにいる組織である事がわかる。

「紀子の食卓」では、自殺クラブでは無く、人々に自分の役割に気付かせるための組織として描かれていた。
自殺をする役割や殺される役割を与えられたものは、他の者よりもステージが高いという概念も導入される。
レンタル家族として収入を得ている事もわかる。
つぐみが演じるクミコは、組織の中でもランクが高いようで、組織の者たちを自由に指示できる立場らしい。
だがトークイベントにて園監督自身が「組織にはクミコよりも更に上の存在がいる」という事を話していた。

そして「愛のむきだし」では、その組織が「ゼロ教会」という新興宗教団体である事が明らかになった。
ゼロ教会の信者は大きく3つに分けられる。
「CAVE」「ACTOR」「PROMPTER」
ケイブは空洞になる事を教わるランク。
アクターは与えられた役割を演じるランク。
プロンプターはアクターに指示やセリフを与える事ができるランク。

安藤サクラが演じる小池は19歳の若さで異例のプロンプターに選ばれたらしく、そこから推察するとつぐみが演じたクミコは上級アクターもしくはプロンプターだと思われる。
なぜ最高位プロンプターであると断言しなかったのかと言うと、クミコ自身が殺されたがっていた点が引っかかるからだ。
だが「愛のむきだし」ラストの小池を見た限りでは、クミコもプロンプターである可能性の方が高い。

クミコと小池の、ゼロ教会に属するための才能を見抜いたらしい男ミヤニシ(漫画家の古屋兎丸が演じる)。
プロンプターである小池の上司にあたるようだ。
クミコや小池はおそらくゼロ教会の教祖に会った事が無いが、ミヤニシは会っているらしいので、そこからもミヤニシはかなりの上位だとわかる。


新興宗教団体「ゼロ教会」は、他にもさまざまな面を持っている。
「愛のむきだし」ではケイブの信者が街頭で募金活動を行っていた。
他には「紀子の食卓」で取り上げられた、コーポレーションⅠ・Cという名のレンタル家族会社。
「自殺サークル」に登場した少女アイドルグループ「デザート」。
表向きはヘルス器具の販売や車のレンタルリースも行っているようだ。
他には有名AVメーカーBUKKAKE社や喫茶店のチェーン店も保有しているらしい。

そう、まさに我々の生活にすでに入り込んでいる巨大組織なのだ。

「ゼロ教会」のモデルは無く、複数の新興宗教をミックスして作ったと園子温監督は言っているが、確実に創価学会も含まれているだろう。
おそらくオウム真理教や統一教会もモデルとして参考にしているだろうが、統一教会について詳しくないのでよくわかりません。
創価学会に詳しいわけでもありませんが。


このように、日本の隅々まではびこっている巨大組織。それが「ゼロ教会」という事です。


■ 「ゼロ教会」の目的は何か

物語の中でゼロ教会の教祖は登場しない。
教義を教える先生役として、社会学者の宮台真司が登場するが、おそらくこの先生もプロンプターだろう。
(実際に宮台さんは若い頃に自己啓発セミナーにはまった事があるらしく、この役は適任だと思いました。本当は「紀子の食卓」で喫茶店に現れる男ミヤニシの役をやる話があったみたいなんだけど、時間が合わなかったみたい。もしそれが実現してたら「愛のむきだし」で殺されてたんだろうか)

小池の才能を見抜き、クミコ達が設立したとされるレンタル家族会社のサポートをする男ミヤニシ。
総合すると彼らの目的はやはり信者を増やす事のようです。
特の「愛のむきだし」の小池はその傾向が強く、キリスト教徒であるユウの父を組織に引き込む事で、その地区一帯にも影響を及ぼせると考えていたようです。
「紀子の食卓」のクミコは信者拡大というより、アクターの発掘に重点を置いていた様子。
彼女は、「世界はライオンだけでは成立しない。食べられるウサギも必要」と考えていて、ウサギの役を演じられるアクターは高いステージに居ると思っていました。

小池とクミコは同じプロンプターとして、アクター達に役割を与えセリフを吹き込むが、小池はユウとヨーコを惹き合わせる奇跡を演出したのに対し、クミコは自らがウサギ役となり殺される事を望んでいた、という違いが見られる。


ミヤニシはクミコのすごさを称えていたが、小池がユウを取り込もうとするのに対しては「19歳の小娘だから注意しなければ」と警戒していた。
推測でしかないが、ミヤニシとしても、ゼロ教会の信者拡大よりは、全国民がアクターとして自覚する事を望んでいたのではないか。
そしてそれはそのまま僕の願望でもある。「愛のむきだし」ではなく「紀子の食卓」に心酔している僕の願いだ。

ゼロ教会は確かにすごいし巨大組織だが、僕は「紀子の食卓」に描かれたレンタル家族に強く惹かれる。
ゼロ教会は愛により崩壊したが、レンタル家族は擬似家族として皆が幸福になれた。


■ 「ゼロ教会」の崩落と新たな救済の可能性

ミヤニシは言った。
自殺クラブなど存在しない。あるとしたらサークル「環」だと。
以下、「紀子の食卓」の原作である小説「自殺サークル完全版」から抜粋する。

あなたは誰ですか? あなたは先ほど自分自身と関係していると言いましたね。だがどうでしょう? あなたはとてもびくびくしていて、記者を演じているとは言えません。父を演じているとも言えません。
現実の社会は、あまりにも過酷で、父や母や子供や妻や夫を演じるには、人々は疲れ果てて、表裏が複雑でしっくりといきません。
ここではすべてがウソで、表も裏もありません。むしろ全面的に虚構をつきすすむこと。それで、初めて自分と出会えるのです。
砂漠を感じるのです。孤独を感じるのです。実感するのです。確固たる砂漠(デザート)で生きぬくこと、それが役割です。
「自殺サークル完全版」園子温著 101ページ

環で囲む。ゼロ教会のシンボル「0」は「環」の事だろう。
だがその環は崩れた。
盗撮の天才ユウによる愛によって。

ゼロ教会の本部では、真っ白な内装の部屋で真っ白な服を着た人々が、役割を演じる勉強をしていた。
ある者は服役囚と面会人。ある者は朝のあいさつ。ある者は家族とのケンカ。
その一番奥で、ユウの父親と内縁の妻のカオリ。そしてカオリの連れ子でありユウがマリアとして認めた少女ヨーコが、楽しそうに鍋をつついている。
その横には小池アヤ。

鍋を囲むというのは「紀子の食卓」のラストと一緒だ。


洗脳されたヨーコを救うため、ユウは単身ゼロ教会に乗り込み、ヨーコに愛を告げる。
血の涙を流して。

ユウが持ち込んだ爆弾により、組織の全貌が外部へと明らかになって、ゼロ教会は崩壊した。教祖は所在不明。
元々教祖なんていなかったのかも知れないと囁かれていたので、もしかすると本当にプロンプター達がアクターを使って市民を勧誘するだけのシステムだったのかも知れない。

しかもそれは、ただの愛で崩壊した。

ユウの愛を受けられないと自覚しつつヨーコと出会わせた小池。
彼女はユウに自分と同じ「壊れたもの」を感じ、惹かれ、結局自害する。

新約聖書のコリント書の13章をそらんじ、「信仰・希望・愛」の3つが重要だと叫んだヨーコと、それを受けるユウ。
ユウの愛により崩壊したゼロ教会。

とするなら、短絡的に考えて、ゼロ教会には「愛」が無かったと言える。
「CAVE」「ACTOR」「PROMPTER」には強い信仰心があるし、役割を演じる事で希望も持てる。
だけど、誰かを愛する人の演技はできても、愛を持てない。
ユウがヨーコへ向けるような愛は無い。
擬似家族のような擬似愛しか無い。


「愛のむきだし」には園監督、オダギリジョー主演の「HAZARD」に登場したジェイ・ウエストも出る。
不良グループのリーダーのような役で、まさに「HAZARD」のぶっ飛んでて魅力的なリーを思わせる。
ユウの盗撮の技術にほれ込む仲間たちは、どこまでもユウを助ける。
仲間を助け抜く。

仲間と愛。
園子温監督はきっとその2つが大事だと言いたいのではないか。
その2つがこの虚構社会を突き抜けるために必要だと言いたいのではないか。


それでも、と僕は思う。「紀子の食卓」のレンタル家族こそが理想の社会だと信じているゼロ教会信者的な僕は、それでもやはり、と思ってしまう。

ユウのように血の涙を流す事はできない。
発狂するほど人を愛する事はできない。


■ 最後に「愛のむきだし」

「紀子の食卓」のつぐみや吉高由里子と同じくらいの迫力で、「愛のむきだし」の小池を演じた安藤サクラ。
妖艶で、新興宗教の洗脳をほどこす者としての表情も良い。
こんな女優がいたなんて、って感じです。
しかも目が離れてるから僕好みだ。

ラスト、ゼロ教会の洗脳が解けたヨーコが住まわせてもらってる親戚の子が、おはスタの女の子だった。マユ。
ヨーコにユウの愛を気付かせる大事な役でした。

ヨーコを演じた満島ひかりも、アイドルグループだったとは思えないほどの演技を見せてくれます。
パンチラし放題だし、男をやっつける時は怖いし、好きな人の前ではほんとかわいらしいし、全然違います。
マスターベーションも披露。安藤サクラとの濃厚なキスシーンもエロくて良いです。

他には「紀子の食卓」にも出たシーンが所々映ってて、「紀子の食卓」好きの僕としては大興奮ですよ。
クミコとか決壊ダムさんとか廃人5号さんとかが話し合ってた部屋とか。
手塚とおるがクミコと紀子を呼んだ家とか。

4時間近くありましたけど、確かに体感時間はかなり短かったです。
上映2時間で休憩に入っても「まだあと2時間もあるのかー」とは思わず。

うしろに女子高生らしき2人組がいて、たぶん主人公の西島隆弘目当てで来たんだろうけど、4時間だと思わず来てたみたいで、それでも帰らずに最後まで見てました。


それでも絶賛するほどではありませんでした。
「紀子の食卓」に通じるゼロ教会には注目します。
でもやはり「愛のむきだし」は「紀子の食卓」を越えないと思っています。

誰か僕を感動させる評論を書いてくれたらわかりませんけど。
だからいろんな人の感想を読みたいんですけど、盗撮シーンがかっこいいとか、女装がかわいいとか、満島ひかりのパンチラは見物とか、そんなフレーズばっかり。

むきだしにした感想を読みたい!!
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テーマ: 映画レビュー - ジャンル: 映画

この記事に対するコメント

はじめまして

私は紀子の食卓より愛むき派です。見ていて感じたもの、心が動いた瞬間が自分ではっきり気づけたからです。これは僕の主観ですが、園子温監督の作る映画で内容が極端に浅いものは見たことありません。だから、1回見ただけであの人が映画というモノをとおして伝えたかったことを理解できる人は稀なのではないかなぁとおもいます。僕もどちらかというと国語力はないほうなのであまり言えませんが、ユウが発狂するほど愛したヨーコのような存在が僕にはいます。たぶんですが、大半の人は自分にはヨーコがいるか、いないかなのではないかとおもいます。僕も最初は西島君目当てで見たの映画には期待していませんでしたが、見終わった瞬間園子温ワールドに引き込まれました。

URL | さそり #-

2011/10/13 13:12 * 編集 *

Re: はじめまして

さそりさんへ

コメントありがとうございます。


> 私は紀子の食卓より愛むき派です。見ていて感じたもの、心が動いた瞬間が自分ではっきり気づけたからです。これは僕の主観ですが、園子温監督の作る映画で内容が極端に浅いものは見たことありません。だから、1回見ただけであの人が映画というモノをとおして伝えたかったことを理解できる人は稀なのではないかなぁとおもいます。僕もどちらかというと国語力はないほうなのであまり言えませんが、ユウが発狂するほど愛したヨーコのような存在が僕にはいます。たぶんですが、大半の人は自分にはヨーコがいるか、いないかなのではないかとおもいます。僕も最初は西島君目当てで見たの映画には期待していませんでしたが、見終わった瞬間園子温ワールドに引き込まれました。



僕はやはり『紀子の食卓』で心が動かされました。
『愛のむきだし』の中の『紀子の食卓』的な部分に反応します。

ユウくんは母親に従いマリアを見つけ出し、命懸けで愛します。
一方『紀子の食卓』では、すべてが演技で事足りると解きます。


ケイブ・アクター・プロンプターのシステムを壊すには愛のむきだししか無い。

愛の破壊性を描いた怪作です。


でもやはりです。
僕は社会を救うには『紀子の食卓』のように、全員がアクターになることだと思えてなりません。
ユウくんのようにマリアを見つけられなくとも、
マリアを見つけたかのようには生きられる。

まずはケイブになるしかないのです!!

URL | さかもと #tHX44QXM

2011/10/14 01:47 * 編集 *

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