12« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»02

実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
スポンサー広告  /  tb: --  /  cm: --  /  △top

サマーウォーズの感想と解説 [2009年08月18日(火)] 

■ 映画「サマーウォーズ」のわかりやすさと当たり前さについて

アニメ版「時をかける少女」の細田守監督の最新作「サマーウォーズ」を観ました。

以下の感想は「サマーウォーズ」のネタバレを含みます。ご了承の上お進みください。



この作品は「わかりやすさ」に満ちている。
世界設定が複雑なので、文章で表現するのは難しい。
でもこの映画を観た誰もが「は? 世界設定が複雑だって? 何言ってやがる」と思うことでしょう。
それぐらいこの作品は、見てすぐに背景を理解できる。
「わかりやすさ」と「当たり前さ」。

アニメ論を始める前に、物語の設定を説明します。


「OZ」というネットワークが市民権を得た現代。
「セカンドライフ」や「mixi」を混ぜたもの、と説明するとわかりやすいかも知れません。
様々な企業が参入していたり、スポーツ大会が繰り広げられていたり。
「OZ」内でアルバイトをすることもできる。
現実世界のインフラともリンクしていて、水道局員は水道局員としてアバターを所持しており、医者は医者としてのアバターを所持している。

この「OZ」の世界が美しい。
かわいらしいデザインと、壮大さを感じさせる奥行き。
全世界10億人がアクセスする巨大ネットワーク。
公共料金の振り込みもできる。
現実と「OZ」との境界は無い。
大人も子供もアクセスする場所です。
「OZ」を通して相手に電話をかける事で、アバター同士で会話できる。
電話の子機やニンテンドーDSからでもアクセスできる利便性があります。


数学オリンピックの日本代表にもれた主人公の健二。夏休みは「OZ」のメンテナンスのバイトを友達とやって過ごしていました。
そこに憧れの先輩である夏季からアルバイトを持ちかけられる。曾祖母の家について来て欲しい。
でも実は、病気がちな曾祖母を元気付けるために、夏季が「フィアンセつれていく」と約束してたのでした。

曾祖母の誕生日会前日。大勢の親戚が集う。
その夜、曾祖父の隠し子である侘助が突然帰ってくる。
夏季の憧れの人は侘助だった。
理由もわからずなんとなく落ち込む主人公。
主人公の携帯電話に数字が羅列されたメールが届く。
朝まで数時間かけてその問題を数学的に解きメールを返信する。

「OZ」はクラッキングされ大混乱に陥っていた。
健二のアバターが乗っ取られ様々なデータの書き換えをしている。ニュース番組には健二の顔が犯人として出ている。

健二のアバターは他のアバターを食い始める。
すると姿が変わり強さが増していく。アクセスできる場所も増えていき、「OZ」は崩壊していく。
「OZ」の崩壊は現実世界のインフラの大混乱をも引き起こす。

その元凶は侘助が作ったAI「ラブマシーン」だった。
システムの行動基準は「知りたいという好奇心」。
その好奇心はラブマシーンを暴走させる。
人工衛星を核施設に墜落させるというところまで。


■ 夏。戦争。甲子園。


無数のアバターを取り込んだ「ラブマシーン」は、核爆発を引き起こそうとする。
人工衛星のGPSを操作し、どこかの核施設に墜落させようとする。
2時間10分後。
それまでにGPSを管理しているアバターを取り戻さなければならない。「OZ」登録者の大部分を取り込んだラブマシーンからどうやって取り戻すのか。

まさに戦争。
世界を救う戦争。

物語と同時に、甲子園の地区予選の映像が挿入される。
親戚の息子が投手として活躍している。
それは物語とリンクしていて、投手が絶好調だと主人公側も「OZ」内で活躍し、投手が追い込まれると主人公側もラブマシーンにやられそうになる。

こういったわかりやすさがいたるところに散りばめられている。
見ただけで誰もが理解できる。

ここまで読んでいただけるとわかるでしょうけど、内容が複雑です。何度も言いますが。
アバターのアカウントを奪われることでシステムがクラッキングされる、というのが見ててすぐわかります。
コンピュータにくわしくなくてもすぐわかるでしょう。
さらに、アニメ映画としての惹きつける技が随所に見られました。


■ わかりやすさの広範性


内容が複雑なだけに、見る人を限定しがちです。
でもそれを避けるために様々な工夫がなされている。

侘助の登場シーンと犬の関係性もそのひとつ。
印象で侘助が悪い奴のようにしか見えない。
家族が揃った陣内家に厄災を持ち込む存在なのではないか、と。実際「ラブマシーン」を作った張本人であるので、「OZ」大混乱を引き起こした張本人とも言える。
でも実は悪い奴じゃない、というのが犬がなついているシーンひとつですぐに理解できる。

ほかに、要所要所でちっちゃい子供3人組が登場する。
物語の説明が続いたり、進行の中だるみした辺りに登場する。
ほんとに子供らしい無邪気な行動をしてて、見ててほほえましいです。
こういうシーンを入れることで、女性の観客を物語から離れさせない効果があります。

物語の進行もそうです。
主要キャラクターが3人います。
カズマ。夏季。健二。
この3人が順番に活躍していく。
だからどんでん返しとかびっくりオチというのはありません。
極端な話、物語の序盤から「主人公が数学を使って世界を救うんだろうな」と予測できます。
でも先が読めない展開じゃなくても十分に感動できます。
わかりやすさ。当たり前さ。

夏季の花札のシーンも惹き込まれる演出がなされてます。

ラブマシーンとの花札対決で、賭け金として家族全員のアバターを差し出す。
家族全員が「OZ」にアクセスし、行く末を見守ります。
この時、携帯電話やニンテンドーDSを手にしてるんだけど、全員がテレビに接続されてる方向を見ています。
確かに大画面できれいな方を見るでしょう。
でももし、家族のみんなが自分の手元を見ていたら、観客はあそこまで惹き込まれなかったでしょう。
全員が一斉に、同じ目標を見据えている。
この映像が大事です。
だから観客も同じ気持ちで「いけー!!」と思える。

健二の成長もわかりやすいです。
徹夜で解いた暗号が、最後は数分で解けるようになっている。
しかも一番最後は暗算です。
感情移入せざるを得ない我々は、このわけのわからない「OZ」という世界と地球の危機にドキドキし、救われたことを本気で喜べるようになっている。


■ この世は現実でしかない


陣内家を支えてきた曾祖母である陣内栄。富士純子さんが声優を務めているのですが、本当に重厚な演技でした。
そしてこのおばあちゃんの存在が「サマーウォーズ」という映画を表している。
当たり前の事を当たり前にやる、という素晴らしさです。

おばあちゃんの考えはシンプルだ。
いざという時は本気を出してがんばれ。

「OZ」が混乱し現実世界のインフラが狂い、交通網や救急、水道などがパニックになった時、人の命にかかわることだと悟ったおばあちゃんは、様々なところに電話をし、「なんとかふんばってくれ」と頼む。
警視総監にまで電話をするおばあちゃん。
そのネットワークにより、奇跡的に死亡者は無かった。
そしてその後、「OZ」内で活躍した主人公健二に対して労いの言葉を告げる。
最初から健二のことを「やる時はやる男だ」とわかっていたかのように。

いまだに「ネットと現実の乖離」とか言ってネットを敵視する人がいます。インターネットの暗部が犯罪を引き起こす、とかなんとか。
でもこのおばあちゃんは、現実世界でがんばった人にも、ネット世界でがんばった人にも、同等の感謝をする。
そしてネット世界でのがんばりは、実際に世界を救うことになる。


「まだ負けてません」
「勝つから戦をするとか、負けるから戦をしないとか、そういう問題じゃない」
「いざという時はまず落ち着いてみんなでご飯を食べなさい」

おばあちゃんの寛大さに惹き込まれた人々の行動は熱い。


誰が見てもすんなり理解でき、当たり前のことを当たり前にやり、血がたぎる程に熱い映画。

おばあちゃんの電話ネットワークで現実のインフラを救い、夏季の行動が「OZ」ネットワークの人々のアバター差し出しを惹起させる。

世界は素晴らしい。
夏は素晴らしい。
がんばってる人はやっぱり素晴らしい。
それはとても当たり前の、当然のことだ。
スポンサーサイト

テーマ: 映画レビュー - ジャンル: 映画

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。