fc2ブログ
01« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.»03

実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

泣き虫で負けず嫌いな小さな小さな大巨人:有安杏果の物語性 

泣き虫で負けず嫌いな小さな小さな大巨人:有安杏果の物語性


ももいろクローバーZのメンバーの中で、有安杏果は異質だ。

リーダー百田夏菜子は天性の素質がある。
玉井詩織は食いしん坊で器用。
佐々木彩夏はプロのアイドル。
高城れには不思議系少女。

では有安杏果は何か。
歌とダンスが得意と言うが、そんなアイドルはいくらでもいる。
多くの人が有安杏果に惹かれる理由が他にある。
それは何か考えていきたいと思います。


■ なぜ我々は有安杏果に惹かれるのか


有安杏果はハスキーボイスでメンバー内でも一番特徴的です。
入れ替わりが激しかったももいろクローバーに一番最後に加入。

ファンにももクロとして認めてもらうまでに相当な努力をしてきたであろうことが、クイックジャパンVol99の単独インタビューからうかがえます。


有安:握手してくれる人の中にも「なんで、ももクロ入ったの?」って面と向かって聞いてくる方もいるし、「僕の中ではまだ五人しか、ももクロのメンバーとは思ってないから」みたいに言われることもありましたね。
(クイックジャパンvol.99 102ページより抜粋)


メンバーの中でも一番身長が低く(公表148.5cm)、歌とダンスは誰にも負けないと宣言する小さな巨人に、なぜ多くの人がここまで惹かれるのか。


前回、百田夏菜子については、「表出が乗った表現。リーダーとしてではなく夏菜子ちゃん自身として叫ぶことに言葉ではなく魂で反応する」と書いた。
(「表出」とは魂の咆哮や動きなど、伝えることよりも内面にあるものを吐き出すような行為。「表現」とは相手に伝わったかどうかで成功か失敗かがわかる行為。夏菜子ちゃんは「表出」が乗った「表現」をし、見ている人の胸を撃ち抜く。例えば、言葉「表現」で「ありがとう」と言うのと、言葉にならず泣きながら「表出」で「ありがとう」と言うのとでは、受け取り方が変わるだろう)

リーダー不在:戦闘美少女百田夏菜子の身体性による表出


では有安杏果は何か。


あえて断言しよう。

「ももいろクローバーZとは、有安杏果の成長の物語である」と。


■ 『コトダマ』は君に届く 『ももドラ』有安回再考


この度ブルーレイとDVD化が決まったももクロのドラマ『ももドラ』
5人がそれぞれ主役になり、全5話の少女の物語を演じた。

第1話、しおりんはおまじないに頼る少女の恋心を演じた。
第2話、あーりんは結婚してしまう姉との微妙な距離感を演じた。
第4話、れにちゃんは他校の生徒への恋心を演じた。
第5話、夏菜子ちゃんはみんなをまとめる役回りから、みんなに助けられて恋を進展させる少女の役を演じた。
(第5話はもっと総括的にリーダー百田夏菜子を描けたのではないか。4話までのマルチスレッド式にして5話目でまとめることで、夏菜子ちゃんの魅力を引き出せたはず。『木更津キャッツアイ』のうっちーみたいな役回りで、実は活躍してた、というような)


第3話。有安杏果主演『コトダマ』
この回だけ他の話と比べて異質だ。
他の回は他者とのコミュニケーションに悩む姿を描いているのに対し、『コトダマ』だけ自身の存在について悩んでいる。

ドッペルゲンガーとして罵倒すべき自己が目の前に投影され、自分の嫌いな部分を叫びぶつけることで嫌いな自分がこの世から去る。
だが現在ある自分も過去の嫌いな自分があったからこそだと知っている少女は、自分の死に愕然として地に崩れ落ちる。

この回だけ映画として輝きを放っているのは、映画的な作法が使われていることもあるが、何より役者の背景にある物語が作品に乗り移っているからだ。

公開当時に書き殴った感想がこちらです。併せてお読みいただけると望外の喜びです。

『ももドラ』第3話 有安杏果主演『コトダマ』が描く大人になるための通過儀礼と自分殺しの喪失感について


要約します。
成長を描く物語は3つのパートに分かれます。
つまらない日常があり、そこから抜け出し非日常体験をし、再び日常に戻るとそこはかつてのつまらない日常とは違った景色に見える、というものです。

『コトダマ』は、自分を好きになれない日常があり、自分そっくりの女の子と出会いその娘が屋上から飛び降りるという非日常体験をします。
作中、再び日常に返るシーンが描かれない。

僕はここから、「その後の成長した姿はこれからのももクロを見ろということか」と解釈しました。


同時期に発売されたクイックジャパン有安号ともリンクしているかのような『コトダマ』


では最初の問いに戻りたい。

有安杏果とは何か。

有安杏果の魅力とは成長の物語だ。

彼女を評し「努力の天才」と言った人物がいる。
他の4人は間違いなく天才だが、有安杏果だけは凡人だ、と。
だが彼女は「努力の天才」である。

記憶はあいまいだが、確かこのように彼女を評したと思う。


努力の天才有安杏果。
メンバーと彼女を端的に表したものがある。
まずはそこから読み解いて行こうと思う。


■ 腹筋回数から読み解くももいろクローバーZ


『極楽門からこんにちは』DVDの特典映像には、体力作りのために腹筋回数を競い合う彼女たちが収録されている。

メンバーの回数がこちらです。
数字は左から1回目、2回目、3回目、という順です。


ももか  34回  34回  37回
かなこ  34回  36回  37回
あーりん 15回  11回  17回
しおりん 22回  24回  23回
れに   29回  29回  32回


いかがでしょう。
僕はこれを見ただけで有安杏果の物語に涙をこぼすのです。

一番身体性が高い百田夏菜子に追い付く。
一度突き離されても、それでも必死で追い付く。
ここに杏果ちゃんの魅力を見た気がしました。

しおりんはムラがある感じ。

れにちゃんもすごい努力の人なんだけど、それはいずれ書きたい。

この、負けじと必死で努力する姿に多くの人は魅了されているのでしょう。


そしてそれは歌声に乗って我々に訴えかけてくるのです。


■ 有安杏果パートから読み解く成長物語


有安杏果が担当するパートの歌詞を読めば、彼女の成長がわかる。
まずは有安パートを列記していく。
できるだけ時系列にしたがって書きます。


シャイニー雲も輝くよ 
『ピンキージョーンズ』

追い掛ける流星の名はスターダム 
『Chai Maxx』

目を閉じちゃ見えるわけがない 
『CONTRADICTION』

雨とか降ろうが槍が降ろうが前のめりで前のめりで行くが勝ち
燃料タンクのやる気満タンでリセットできたらさぁ出発だ
良いか悪いかわからないまま大事なものを無くすまえに
泥だらけになったって
『天手力男』

その密かな頑張りを 誰一人知ることなくても 構わないんだ
分かれ道で行き先悩んだ時
自分の限界に立ち止まってしまったとき
『コノウタ』

どうか諦めず希望をその胸に
『ももクロのニッポン万歳!』

右往左往それ問題外
さあ そろそろ目覚める時
おのれの武器は何なのか
『BIONIC CHERRY』

君に会えたこと 一人でいること その全てを抱きしめるよ
『白い風』


いかがでしょうか。
暗い雲が輝きだし、スターダムを目指す少女。
嫌な現実に目を閉じていては見えるわけがないと現実を見据える。

どんな事態でも前のめりに泥だらけになってでも突き進む。
人知れず努力し続けるけど、人生の選択で悩んだり、自分の限界を決めて動けなくなってしまう。


でもそこでリーダー百田夏菜子が叫ぶ。

すべてが無駄じゃなく 力になるってことを皆で証明しようぜ
『コノウタ』


そこで有安杏果は再び立ち上がる。
自分の事で悩んでいた少女は、日本に向けてエールを送る。
努力の天才が「どうか諦めず希望をその胸に」と懇願する。

有安杏果に東北パートを任せた運営陣に賞賛を送りたい。


そこからの有安杏果の活躍はファンであれば誰もが認めるだろう。
彼女はももいろクローバーZに無くてはならない存在となった。


右往左往それ問題外
さあ そろそろ目覚める時
おのれの武器は何なのか
『BIONIC CHERRY』


彼女はもう迷いはしない。
覚醒し武器を獲得している。
ライブパフォーマンスやブログでのファンへの想いやバラエティでのリアクション王など、有安杏果の魅力は語りつくせぬほどになった。


君に会えたこと 一人でいること その全てを抱きしめるよ
『白い風』


ももクロに一番最後に加入し、所在無さげに立ちすくんでいた小さな少女は、今やすべてを引き受け抱き留めることができるほどの大巨人へと成長した。

そしてそれは、そのままももいろクローバーZの成長物語でもある。

ももいろクローバーZの成長物語を、有安杏果に歌わせること。
有安杏果だから歌える。
有安杏果の歌声だからファンに染みわたる。

加入当初ファンからなかなか認めてもらえず、想像を超えるほどの努力をしてきたであろう彼女。
小さい身体に秘められた負けん気。
そして胸を打つ歌唱力。


もう一度言おう。

「ももいろクローバーZとは、有安杏果の成長の物語である」


少女たちは泣きながら夢へと立ち向かう。
その中でも杏果ちゃんはまっ先に泣く。
そして誰よりも努力して、いつだってギリギリで辛勝する。


夢を叶える一番の方法は努力である、という誰もが知っていてわかりきったことを、彼女は「私にはこれしかできないんで」とばかりに愚直なまでに実行し続ける。

杏果ちゃんを応援することは、自分自身をも叱咤激励する行為だ。

これは前回評した夏菜子ちゃんでも思ったことだ。
杏果ちゃんもそうだし、メンバー全員がそうなのだろう。
彼女たちを応援するということは、自分自身を見つめ直す行為だ。

彼女たちを見ていると、忘れていたものに気付かされる。
がんばって生きている人ほど、彼女たちのがんばりが響きわたる。


先の発言を言い直す。


「ももいろクローバーZとは、我々の成長の物語である」と。

スポンサーサイト



テーマ: ☆女性アイドル☆ - ジャンル: アイドル・芸能