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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『メン・イン・ブラック3』のタイムパラドクスの浅さ 

■ 『メン・イン・ブラック3』のタイムパラドクスの狭さ


『メン・イン・ブラック3』を見てきました。

宇宙人と戦う秘密結社のお話ですけど、今回は映画的に見てとても残念な作品でした。

以下ネタバレを含むのでご了承の上を進みください。



■ 回収されない伏線


ウィル・スミス演じる「エージェントJ」が過去に戻り昔の「エージェントK」を助ける、という内容。


「K」の過去に触れるということで、いくつかの謎が散りばめられてます。


・過去饒舌だった「K」が現在無口なのはなぜか
・「K」と「O」の関係は?
・凶悪宇宙人を助けたのは誰か
・「J」だけが「K」の記憶を失わなかったのはなぜか


僕の見落としという可能性もありますので、ご批判はありがたく受け取ります。


これらの謎は明らかにされないまま映画は終了します。


未来を予見できる宇宙人がカオス理論に触れます。
小さなできごとが予想できない大きなできごとを呼び込む。

だとしてもタイムパラドクスに対する思考の浅さにはがっかりです。


現在過去に戻ることはできないとされています。

例えば、33歳の僕が10年前に戻り23歳の僕を殺すとします。

すると23歳で死んだ僕は33歳になることはありえませんので、「10年前に戻って23歳の僕を殺す」ということができません。

これがタイムパラドクスです。
成立しない。

逆に言うと、「この現在」は安定せざるを得ない。
パラドクスなんて起きる余地がない。
「この現在」はすべてが収斂した結果です。
未来から来た何かが過去をいじったとしても、それらがすべてに決着を付けた結果が「この現在」です。


過去をいじられたか知り得ない我々にとって、「実は現在は数回目の改変中」というのはありえない。



となると、凶悪宇宙人を助けたのは誰なのか、となる。

自分の手から出る小さい宇宙人が助けてくれたんだけど、あれを運んだ女はどうやってきたのか。

そして助かった凶悪宇宙人が過去に戻るということは、凶悪宇宙人はそもそも捕まらないということになる。

「K」は殺され凶悪宇宙人は逮捕されない。

となるとそもそも凶悪宇宙人は脱獄する必要もないわけですから、過去に戻って「K」を殺すということもできません。

タイムパラドクス。



そしてなぜ「J」は記憶が消えなかったのか。

「K」と一緒の場所にいたからだ、と説明された気もするが、その後の説明もなく。



タイムパラドクスだから矛盾するのは当たり前です。
なので、そこを活かして映画的に昇華するのが素晴らしい。

でもこの映画は何もそこが活かされていません。


物語のラスト、若い「K」を助け命を落としたのは実は「J」の父親だった。

その事実を知り「K」は幼い「J」を育てようとしたのだと理解した。


1、「J」が過去に戻らなければ「J」の父親が死ぬことはなかった
2、「K」が死ねば「J」はMIBにスカウトされない
3、つまりはそもそも「K」を救う者など存在せず、「J」はジェームズのままで父親と平和に暮らしていただろう


でもタイムパラドクスを使ってもっと感動的な物語をつむげたはず。

現在の「K」が無口になった理由がここにあった、などして伏線を回収することができたはずだ。



派手な映像も少なく、宇宙人との戦いも地味。
物語としての美しさも皆無。

ハリウッド映画は日本人をなめてるのか。
シリーズ物で知名度ある人物を出しておけばいい、と思ってるんだろうか。

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テーマ: 映画感想 - ジャンル: 映画