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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『あまちゃん』が紅白歌合戦に出場することの意味 

2013年は『あまちゃん』の年だったと言えるでしょう。

「じぇじぇじぇ」が流行語大賞に選ばれ、後続の『ごちそうさん』も高視聴率を維持し続け「朝の連ドラ」を復活させたと感じられるほどの影響力です。

そして紅白歌合戦ではあまちゃんオールスターズと言えるほどの演出が行われました。


テレビシリーズでは最後アキちゃん(能年玲奈)とユイちゃん(橋本愛)が崩壊しいまだ修復されないトンネルの向こう側へと突き進んでいきました。

ユイちゃんは一度も岩手から出る事がなく、アキちゃんは地元である東京ではなく第二の故郷とも言える祖母や母の田舎である岩手で活動していくことを決意したのです。


2013年となりGMTは紅白出場を果たしました。
しかも途中妊娠をして脱退した宮下アユミ(山下リオ)を再加入して。
(小野寺ちゃんとベロニカは残念ながら欠席だった模様)


そして心憎いのが最終回ではなく157話「おら、紅白に出るど」としているところで『あまちゃん』の物語(すなわち復興の物語)はまだまだ終わりではないというメッセージが込められています。


岩手にいたユイちゃんは紅白の舞台の上からのアキちゃんの呼びかけでついに東京にやってくるのでした。
アキちゃんの声が届かなかったユイちゃんは2013年になってついに笑顔でアキちゃんの想いに応えるのです。

アキちゃんユイちゃんによる『潮騒のメモリー』はそのまま天野春子(小泉今日子)へとバトンタッチされます。

天野春子は鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の影武者として生きアイドルデビューを逃した苦い経験を持ちます。
歌が下手な鈴鹿ひろ美の代わりに歌い、表舞台に立つことができませんでした。
それがついに紅白歌合戦という大舞台に立つことができたのです。


そしてそのあとは鈴鹿ひろ美が登場します。
『潮騒のメモリー』の 「三途の川のマーメイド 友達少ないマーメイド」を「三代前からマーメイド 親譲りのマーメイド」と変えて歌います。
親子三代とは夏バッパ(宮本信子)と天野春子と天野アキのことです。
この三人が集まった場所である紅白歌合戦の場でこの歌詞を歌い上げてくれました。


鈴鹿ひろ美が国民の前で生歌を披露するというのは事件だ。
なぜなら彼女は歌が下手なはずだから。
でも彼女が音痴でないという事が証明され、天野春子が紅白で歌える事になった。


そう、『あまちゃん』は影武者が救われる物語だ。

鈴鹿ひろ美の影武者であった天野春子が影武者だとしてもそれで良かったのだと気付くことができた。
それはまめりん(足立梨花)の影武者であった天野アキによってだ。
その天野アキもアメ横女学園のセンターまめりんと共に紅白の舞台に立ち、しかも常に比較されてきた天性のスターである足立ユイと共に『潮騒のメモリー』をカヴァーして歌う。

本物ではなく偽物が偽物として救われる物語。
東京出身のアキちゃんが偽の方言を使い、地元ではなく岩手を救済しようとする。


『あまちゃん』を見てなぜ惹かれるか。
なぜ現実に介入してくるのか。
なぜ「紅白歌合戦」という現実に入り込んでも違和感が無いのか。

それは『あまちゃん』が「特別に選ばれた人達の物語」ではないからだろう。
我々の身近にいるような人たち。
主役ではない我々のように身近で、影武者のように誰かの為に生き続けている人たちが魅力的に輝く物語。
だからこそ染み渡ってくる。

そして157話「おら、紅白に出るど」では恋人発覚で引退したまめりんと宮下アユミも共に同じ舞台に登場する。
物語から退場した者が再び救済されるのだ。


『あまちゃん』という半現実がこの社会の指標となるでしょう。


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テーマ: テレビドラマ - ジャンル: テレビ・ラジオ