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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

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『新宿スワン』と『ラブ&ピース』を「受け入れない」 


園子温の最新作『新宿スワン』と『ラブ&ピース』を見た。
がっかりだった。
清濁併せ飲むのが園子温作品だとしたら、その清も濁も突き抜けていないからだ。
二つの作品に対する感想のあとに、「だったらこっちの園作品を見ようセレクション」を書く事にしよう。
映画の園作品はこれまで17本見ていることになる。全作品を見ている園マニアというわけではないけど参考にはなるかなと思っています。

以下二つの作品と『ヒミズ』の内容に触れネタバレを含みますので未見の方は鑑賞後にお読みください。



■ 『新宿スワン』は制限の中でどう興行映画を撮るか、という挑戦


原作の『新宿スワン』は読んだことありませんでしたが、『ヒミズ』は単行本を発売時に買って読んでいました。漫画原作を映画化するのは本作で3回目ということになりますが(ドラマから映画化というので『みんな!エスパーだよ!』が4回目)、漫画原作ものは監督に合わない気がする。
漫画原作を実写映画化して原作ファンを満足させる人がいるのかということについてはここでは置いておきましょう。


『ヒミズ』は好きじゃないんですが震災のあの時に映像に時代を残したという点がすごい。そして原作とラストを変えた点も評価されて当然だと思います。
原作では父親殺しをした主人公が残りの人生を悪い奴殺しに費やそうとします。ですが一番悪い奴は父親殺しをした自分ではないか、と自分を殺す。
映画版『ヒミズ』は園監督が語っているように、「絶望に勝ったのではなく希望に負けた」というラストになっています。絶望に打ち克ったから生きたのではなく、希望に打ちのめされて生きさせられた、というようなラストです。


『新宿スワン』は原作を1巻の最初だけしか見てないので比べられませんが、いろいろな表現がマイルドになっていると思われます。
映画版では「スカウトした女の子全員を幸せにする」と誓ってますが、原作では宣言がありませんでした。
(あくまで序盤なのでそれ以降に宣言がなされてたらごめんなさい)

本作は脚本に参加していないようで鈴木おさむと水島力也(『あずみ』とかの人らしい)が共同で脚本を書いたようです。

つまり園監督は脚本を書けず、原作という縛りもあり、全国展開の興行映画を撮らなければならないという足かせがあったわけですね。
パンフレットなどを見ると「本作では自分の色を消した」と語っており、確かにこの映画を見て「園子温っぽいな」と感じるところは何もありませんでした。
深水元基が出てるところぐらいでしょうか。

続編を臭わすような終わり方だったので興行成績次第では『新宿スワン2』もありえるのでしょうね。原作も長いし。
その時はぜひ園子温以外の監督でお願いします。

綾野剛を始め出演者のみなさんはほんと素晴らしくて、この作品以外の映画で見たかったな、という印象です。
山田孝之も沢尻エリカも真野恵里菜もみんな良かった。
ただ物語が全然おもしろくなかっただけです。

これを見ても「スカウトになろう!」とは思わないし、「スカウト絶対許さねぇ!」ともならない。
鑑賞後日常に戻ってこられる。
「このあと何食べる?」と気軽に現実に戻れます。

映画を見る前とあとでは日常が違って見える。このような映画を園作品に求めています。
宮台風に言うなら「人畜無害な映画じゃなく人畜有害な映画」です。


「『新宿スワン』見たけど園子温ってこの程度かよ。話題になってるだけか。」というあなたにおすすめな作品は『恋の罪』です。
東電OL殺人事件を下敷きに、貞淑な妻と売春婦と女刑事の3人(+1人)の女の性を描いた傑作です。

『地獄でなぜ悪い』はヤクザVS映画好きというおもしろさがあってこちらもおすすめです。



■ 『ラブ&ピース』のファンタジーは子供向け?


『ラブ&ピース』は子供が見て喜ぶようにできてるんだろうか。
お子さんと一緒に見た方から感想を聞きたいです。どんな反応だったでしょうか。

うだつの上がらない男がいる。
飼ってた亀を同僚にバカにされ亀をトイレに流して捨てる。
その亀が魔法により夢を叶える亀となる。
亀のおかげでロックスターになっていく男。
また別の魔法により最初の姿に戻る亀と、その結果また元の暗い男に戻った主人公。

ツイッターで検索するとすごく好評です。
園子温の映画をほめておけばイケてるとでも思ってるんだろうか。
それとも単純に僕が「映画盲」(文盲みたいなもの。映画を見れていない人)なだけなんだろうか。
僕が「映画盲」だとしたらぜひこの映画の素晴らしい点をいっぱい僕に教えて欲しい。


『ラブ&ピース』では主人公の男の物語とは別に、西田敏行演じる謎の男の物語も同時に進んでいく。
捨てられたおもちゃやペットなどと一緒に下水道の奥で暮らしている。

実は彼はサンタさんで、捨てられたおもちゃやペットは元のきれいな姿に戻ることができ、クリスマスの日に再び子供たちに配られるようだった。
どうせまた捨てられるかも知れない。
それは主人公の男も一緒だ。
また元の冴えない男に戻った。
それでも彼を愛してくれる女性を得ることができたのだろう。
ハッピーエンド。に見える。一応は。

これを見て愛とか平和とかに想いを馳せることができるかな。
できる人もいるんでしょう。
「ペットを大事にしよう」とかそういう感想を持つ人もいるんだろうな。

園子温の集大成とまで言われ期待値が上がり過ぎたせいだけじゃなく、単純につまらなかった。


愛についてなら『愛のむきだし』があるし『希望の国』も深い愛が描かれています。



■ 日常を信じていない園子温がなぜ日常を描くのか


著書『受け入れない』を始め様々なところで監督は常識を疑うことを推奨しています。
当たり前とされているものはつまらない。本当におもしろいことをしていこう、というメッセージです。

それを踏まえると、『新宿スワン』も『ラブ&ピース』も監督自身の言葉に反しているように思えてなりません。

映画鑑賞後に日常に戻ってこれる。
つまらない日常から再びつまらない日常へ。


僕の好きな園子温作品は違います。
鑑賞後に日常が変容します。
今まで見てきたものが違って見える。
今まで信じてきたものがいつ破れてもおかしくないほど薄っぺらだったことに気付く。
今まで怖いと思ってきたことが全然怖くないことを知らされる。
これが映画だと思っています。


だからこそ園監督の言葉を借りて言います。
『新宿スワン』と『ラブ&ピース』を受け入れない、と。
園子温色というものを決めつけたくないという思いが強いようですが、別に撮りたくないものを撮る、というのとは違うと思う。
本当に『新宿スワン』や『ラブ&ピース』を撮りたかったんですか?

『紀子の食卓』や『希望の国』などは園子温監督の「撮りたさ」「撮らなきゃいけなさ」がフィルムに刻み込まれてしまっていた気がします。

ピカドンと名付けられた亀が巨大化し、国会議事堂のような形をした研究所を突き破って脱出するということに何も批判力を感じません。
『希望の国』で夏八木勲が我々に向けた銃口にこそ批判力を感じます。


園子温がロックスターに祭り上げられた鈴木良一なんかじゃないことを信じてこの文章を綴らせていただきました。



【園子温作品ガイド】

・『紀子の食卓』
女子高生役の吹石一恵と吉高由里子の演技は必見。『自殺サークル』のサイドストーリーを描いた作品。

・『冷たい熱帯魚』
愛犬家殺人事件をベースに、殺人事件に巻き込まれる家族を描いた衝撃作。

・『TOKYO TRIBE』
ラップバトルアクションスプラッタームービー。とにかく見ましょう。

・『地獄でなぜ悪い』
ヤクザの抗争に巻き込まれた男と映画バカのお話。むちゃくちゃ。

・『希望の国』
原発事故後の日本をどう生きるか。世代が違う男女3組をメインに力強く描いた作品。

・『恋の罪』
東電OL殺人事件をベースに女3人の生き様を描いた作品。

・『奇妙なサーカス』
どれが現実でどれが妄想でどれが嘘でどれが真実なのか。奇妙な空中ブランコのような浮遊感。


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