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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『リアル鬼ごっこ』という詐欺 『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』が同時に公開される意義について 


園子温版『リアル鬼ごっこ』が大変不評のようです。
『新宿スワン』から始まり『ラブ&ピース』、『リアル鬼ごっこ』と同時期に3作も同監督の新作が公開された例を他に知りません。
9月には『映画版みんな!エスパーだよ!』も公開されます。
『ひそひそ星』という自主制作映画も上映中ということなので、2015年だけで5本も公開されることになります。

『新宿スワン』は漫画が原作で、かつ監督自身の色を出さないようにしたとパンフレットなどで語られています。
『ラブ&ピース』はオリジナル。監督のすべてをぶつけたと言われています。血が吹き出したり人が死んだりしないということで、監督自身は世間の「園子温イメージ」を意識して作ったのではないでしょうか。
『みんな!エスパーだよ!』は漫画原作のテレビドラマが劇場版化したもので、テレビ版を見ている限りではコメディ要素が強いと思われます。
『ひそひそ星』は7月26日(日)までということなので早く見に行かなければ。

ということで園子温好きの僕が『リアル鬼ごっこ』を見た感想を書きます。
園作品のネタバレを多く含むので未見の方は了承の上お進みください。


■ 『リアル鬼ごっこ』すら否定する園子温

原作の小説は全国の佐藤さんが殺されるという設定だそうです。
映画版公開前に『リアル鬼ごっこライジング』というショートムービーが配信されました。『リアル鬼ごっこ』のエピソード0にあたる短編3作です。
ですがいざふたを開けてみれば園子温版『リアル鬼ごっこ』とはまったく関係が無いことがわかります。
そもそも園子温版は原作の案すら何も活かしていません。
勝手な想像ですがおそらく園子温は原作を数ページ読んで床に叩きつけたんじゃないでしょうか。
「ライジング」の方では3作ともタイトルに「佐藤さん」と入っているので原作から派生させた短編であり、園子温版へとつなげようとしている意思というか、物語として破綻させないよう制作していることが伝わってきます。

園子温は何をやったかと言うと『リアル鬼ごっこ』というネームバリューだけを拝借して女子校生の惨殺シーンを撮影しまくっただけです。
あと女性のみんなが大好きな斎藤工を白ブリーフ一丁の姿にして「トリンドル玲奈(ミツコ)とセックスしたかっただけ」というキャラにしたかっただけ。

原作はもちろんのこと、こんな映画を見に来るような奴らをも突き放して馬鹿にし罵っているような、監督の情念ドロドロなB級作品がこの『リアル鬼ごっこ』です。
パンフレットを読むと、原作から「何かが何かに追われる、という設定だけを活かし」と書かれてあって、「それってもはやリアル鬼ごっこ関係無いじゃん」と問わずにいられません。

そもそも園子温版『リアル鬼ごっこ』はストーリーもよくわかりません。
ミツコ(トリンドル玲奈)、ケイコ(篠田麻里子)、いづみ(真野恵里菜)の3人が何の前触れも無く姿が切り替わります。ミツコは突然自分の姿がケイコになり、周囲の人たちもケイコと呼ぶので混乱します。いづみになった時も同じく。
種明かしをするとここは斎藤工が演じる謎の老人Zがゲームとして楽しんでいる世界だったのです。
数十年前に死んでしまったミツコたちの遺伝子からクローンを作ってゲームの中で操っていたと。

でもそれって姿が切り替わる説明にはなってなくないですか?
そもそもゲーム世界から抜け出せたミツコが雪原の上で目覚め、その後走り去って画面から消えていくけど、本体は数十年前に死んだんじゃなくて?
などなど気にしだしたらキリがありません。頭が狂いそうです。

園子温は過去にも「見た人を狂わせようとしている作品」を何作か撮っています。
不快さで言えば『自殺サークル』が今回の『リアル鬼ごっこ』によく似ているでしょうし、自分が誰なのか最後までわからなくなるという点で見れば『夢の中へ』や『奇妙なサーカス』がそうでしょう。痛み、傷、つらい過去などが自分のよりどころになるなんて嘘っぱちだと痛烈に訴えています。

『新宿スワン』と『ラブ&ピース』と『リアル鬼ごっこ』。
まるですべてが違う人の作品のようです。
『新宿スワン』が園監督かと思っていたら『ラブ&ピース』のような作品を作り、そうかと思えば『リアル鬼ごっこ』のような作品をぶちまける。
どれが園子温か。園子温は一体どこにいるのか。

きっと園子温は「これらすべてを合わせて園子温なんだ」というような感想につばを吐いてブーツで踏みつけるだろう。
おそらく「このどれもが園子温ではない」という答えが一番お気に召すのだと思う。

ゲーム世界から脱出したミツコは真っ白い雪原の上で目覚める。
雪原の上にはミツコのあしあとが残されていた。
起き上がったミツコはあしあととは反対の方向に走り始める。
何者にも追われていないのに。
画面から消えたミツコはどこに行ったんだろう。

女子校生を壊し、物語というものを壊し、映画というものを壊し、そして映画から消えていくのだろうか。
園子温監督の次回作の情報は今のところ出ていない。


■ 『リアル鬼ごっこ』が大嫌いなあなたへおすすめの園子温作品

『リアル鬼ごっこ』を見ただけで「もう園子温見ねぇ」とするのはあまりにももったいないです。
これまで読んでいただいたように、『リアル鬼ごっこ』は園子温作品であって園子温作品であらず。どれも「これが園作品」というものは存在しないのです。
つまり『リアル鬼ごっこ』が嫌いだからと言って園作品全部を嫌いになる必要はありません。
ひとつの事が嫌いだとその人すべての事を嫌いになるのは日本人の悪いところです。

そこでおすすめの園作品を挙げていきたいと思います。


血とか殺されるとかがダメ、という方にはぜひ『希望の国』をご覧いただきたいです。
原発事故と家族を描いた傑作です。今生きている場所が一体どういうものなのか見直すためにもぜひ見てください。

ストーリーがそもそも意味不明という方には『紀子の食卓』がおすすめです。
とても深い物語が描かれています。吉高由里子の映画デビュー作でもあるのでぜひ彼女の真のすごさを体感してください。

『リアル鬼ごっこ』のキャラが切り替わるのが意味不明、という方には『奇妙なサーカス』がおすすめです。
こちらの方がもっと意味不明ですが、見たあとで世界の景色が変わるはずです。


他にも、今をときめく俳優さんが様々な作品に出てますので、そこからチェックするのも良いかも知れません。
『リアル鬼ごっこ』に嫌悪した人ほど園作品を見るべきなのです。一番園作品らしく無いものが園作品だからです。



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