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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『大人はわかってくれない』の雨から『スーパーヒーロー』の雨上がりへ 


私立恵比寿中学の最新曲『スーパーヒーロー』のMVを見ていたら知らないうちに涙ぐんでいました。
僕は『大人はわかってくれない』のMVが大好きで、『アイドル感染拡大』というアイドル評論誌にこのMVについての論考を寄稿しました。
『スーパーヒーロー』には『大人はわかってくれない』と共通する部分があるように思えました。だから涙ぐんでしまったのでしょう。
キーワードは「孤独であるというつながり」と「成長」です。


『スーパーヒーロー』と『大人はわかってくれない』に共通する点はみんなそれぞれバラバラだ、ということです。
『大人はわかってくれない』ではみんなバラバラの制服を着ていて目を合わすこともありません。大雨の中ほふく前進するかのように、誰もわかってくれないつらい毎日を突き進んでいるという点が一致しています。

『スーパーヒーロー』に登場する少女たちはそれぞれ別々に活動しており、ストリートミュージシャンもいれば役者を目指している子もいれば学生もいます。学生の中でも、部活動に励む子や試験勉強に励む子、友達に合わせるようにカラオケではしゃぐフリをする子など、いろんな子がいます。
共通するのは誰にも見えない色違いのマントを背中に背負ったスーパーヒーローであるという点です。
マントを背負っていますが使い方がわからない彼女たちは当然空が飛べるわけでも悪者を倒せるわけでもなく、むしろマントがあるせいで孤独の色を強めてしまうのです。他の人とは違うはずなのに何もできないことがより孤独を深めます。

ある時少女は自分と同じようにマントを背負った少女と出会います。
初めて会ったのに同志であると理解し合えるマント。このマントが象徴するものは人によって様々でしょう。ある人は好きなロック歌手で理解し合うのでしょうし、ある人は好きなジャンプキャラの言動で同志だと悟るのでしょう。誰かに親切にしているところを見て仲間だと感じることだってあるでしょうし、自分自身に対する意味不明さによっても共感し合えるでしょう。
そしてこのMVに出てくる少女たちは紛れもなく私立恵比寿中学というマントを背負っているのです。
この8人じゃなくても良かったはずなのに、なぜかこの8人であるという奇跡こそがマントの正体です。

そしてこのMVでは画面の右から左の方向に向かって走るシーンが所々見られます。
『大人はわかってくれない』では右から左に向かって、殴りつけるような雨の中、銃を抱えほふく前進していました。その時はみんなそれぞれ別々で、仲間同士ではなくただ「大人はわかってくれないものなんだ」というあきらめのみが共通していました。

屋上にたどり着いた8人は陽の光に祝福されます。
そして地面は雨上がりのように濡れており、MV中は雨が降っている描写が無いことから、おそらくこの雨は『大人はわかってくれない』で降っていた雨なんだと思います。
「大人は絶対にわたしたちのことをわかってくれない」というあきらめでつながっていた少女たちが成長し、大人に近づくにつれ「大人はもう笑わないのかな?」という疑問に対する答えを自らの身体で獲得したのです。マントを背負った仲間たちの弾けるような笑顔によって。
だから『大人はわかってくれない』で延々と降り続いていた雨の日常に対し、『スーパーヒーロー』では一切雨が降らないのです。
彼女たちはマントを背負っています。一人では何をしていいのかわからなくても、同志が集まることで笑顔で駆け抜けることができる。


ぜひ『大人はわかってくれない』と『スーパーヒーロー』をセットでご覧いただきたいです。
少しずつ成長していく私立恵比寿中学の輝きを感じ取ることができるでしょう。








追伸
個人的に猛烈にアピールしたいのがカラオケから出てきたりななんがぽーちゃんと出会えたことで見せた泣き笑いの表情です!あの表情だけで「ここではない感覚、わたしではない感覚」が一気に払拭されたことが鮮やかに描かれています。
みなさんも自分だけの「グッと」ポイントを探しましょう!



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