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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

喪失・咆哮・再生・希望  【2&2周年記念ライブを終えて】 




2013年10月19日(土)のブログを読み返した。
2&ワンマン直前にSayaが突然脱退し、一人取り残された少女がそれでもワンマンライブを決行。そう、この日は2&が一人となった出発点でもあり、Saki+ファン全員=2&というコンセプトが掲げられメンバーが日々増え続けていく期待と不安と熱い想いがたくさん詰まった大事な日でもある。
この日のライブで一番最初に披露された曲が『片眼のLiliy』。
この曲は元々SakiとSayaの二人で披露されるはずだった。タイトル通り片眼をもがれることとなった2&の絶唱絶叫は、今でも聴いた者の肌に打ち付けられている。

そして2015年10月16日(金)。新生2& 2周年記念ライブで1曲目に披露されたのもこの『片眼のLiliy』だった。
2年前とは比べ物にならないほどパフォーマンス力も向上し、特に歌唱力は別人のようだ。

アイドルは何かを失うことで光り輝く。
ももクロは震災と早見あかり脱退という喪失に立ち向かうように躍進し続けた。
AKB48も多くのメンバーが卒業しているし、ハロプロメンバーも青春時代を犠牲にしてそれをパフォーマンス向上に費やしている。

なぜ喪失したアイドルが光り輝くのか。それは誰もが喪失や後悔の時に強烈な生を体感してきたからだ。
大事なものを失った時、いかにそれが大事だったのか実感し、「あの時ああしていれば」という後悔の炎に焼き尽くされる。

片眼を失ったLiliyは、喪失と後悔に焼かれながら「誰か私を助けて」と叫んだ。
その叫びは多くの2&ファミリーを仲間にし、アイドルの心も動かすこととなった。
(この日参戦したダイヤモンドルフィーのしらいしゆのは2&Sakiが一番好きなアイドルで、語っているだけで涙があふれ出すほどであった)


2曲目に披露されたのは『限界圧縮人形』。
今年発売されたファーストアルバムの曲順通りになっている。
『LIVE IDOL ARTIST』は2&をテーマとしたコンセプトアルバムだ。
【参照】2&コンセプトアルバム『LIVE IDOL ARTIST』がすべてを超える

片眼を失い、限界まで押しつぶされた少女がリミッターを解除する。
3曲目に披露されたのが『兎の奴隷とカシオペア』であり、この曲は奴隷となった兎がただひとつ神様からどこまでも跳べる後ろ足をもらいカシオペア座まで飛翔する、という内容だ。リミッターを解除した2&がどこまでも突き抜けていくと予感させる楽曲である。

4曲目は『未来を』。
恋愛曲にも聞こえるが、2&が歌うとSakiとファミリー全員のことを歌っているように思える。

というように、2周年記念ライブのセットリストは2&の歴史と応援しているファミリーに向けた感謝が込められているのがわかる。


大切なものを喪失し、ただ叫ぶことのみを許され、そして再生していく。
アイドルは我々の感情を揺さぶる。
それはアイドルが自分の双身であるかのように思えるからだろう。
大切なものを失い続け、ただ叫ぶしかない日々であるにも関わらず、それでもあえて生きている我々にとって、アイドルは自分自身のようでもあり、ありえたかもしれない未来を突き進んでくれている希望でもある。


そしてこの日初披露された『2つ虹』というギター弾き語りの曲の一節にこうある。

「雨上がりの 空に二つの虹が咲いたよ」

絶望の先には二つの虹が待っている。
それは、「君と僕の未来を」きらきらと彩ってくれる。

まだギターを練習して一ヶ月ということだったが素人目には一ヶ月でこれだけ弾けるようになるのかと驚いた。
でも「もっとうまく弾けた」と不満げな表情のSakiはとても微笑ましかった。
静かに、そして力強く歌い上げたその歌声は皆の胸に届いただろう。

2年前に「誰か私を助けて!」と叫んだ女の子の姿はもうなく、ただそこには我々に希望を見せてくれる女の子がいるだけだった。
予定外のアンコールで披露されたのは『ネガポジmonster』。
ファミリーみんなが手をつなぎ「ほらまた今日が始まった」と締めくくられた。
その「今日」はとても希望にあふれた「今日」だった。




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