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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『星の王子さま』と絆コスト 


■ 悲しむために行動することが大切なこと


すすめられて『星の王子さま』を読みました。

「本当に大切なことは目に見えない」というフレーズが先行していて、別に読まなくてもいいや、と思ってたのですが、本をいただいたので読みました。
そこにはもっと大切なことが記されていました。

それは「悲しみをしっかり悲しむことができるか」ということです。


未読の方でもある程度ストーリーは知っているのではないでしょうか。
それほど有名な作品ですが、人聞きではまったくこの作品の真意を受け取れません。

「そうか。大切なことって目に見えないものなんだ」と納得して終わるだけではあまりにももったいない。


砂漠に不時着した飛行士がある星から来たとされる男の子と出会い飛行機が直るまで話し合ったことを記録したものです。
自分の星を捨て、いろんな星を渡り歩いた話を聞き、飛行士は男の子と絆を深めていきます。

その男の子が自分の星を捨てた理由は、あるきれいな花が原因でした。

きれいだけど高圧的で素直じゃない花の面倒をみるのが嫌になり、男の子は自分の居場所を探しに旅立ちます。

男の子はその後いろんな人と出会い学んでいきます。

数字を数えることでプライドを保つ男や、他者の行動を自分の命令通りだと言い替える男など、大人のくだらなさを批判していきます。
物語上、男の子は疑問を投げかけるだけですが。


やがて男の子はあるきっかけで見捨てた花のことを強く想います。

この世に唯一の花だと思ってたものが、実はある星に数千もあるほどのありふれた花だったのです。
ですが男の子が世話をした花は唯一のものです。

男の子は絆コストについて学びました。


面倒なこと、自分が嫌だと思う相手との関係、納得がいかないこと。
現代はこのようなことがあった時に回避するスキルばかり特化させてきました。
コンビニエンス化、地方の一律チェーン店設置化、機械による全自動化などなど。

どこにいても風景が同質になり、時間が短縮することで便利になる。
だがとても味気ないものになりました。


男の子は無駄なことばかりしているように見える大人たちを見続け、あの花が凡百のものでしかないと知ったことで、実は面倒なことや時間がかかることや気に入らない相手と関係を続けることの大切さに気付くのです。

この「絆コスト」を掛ける行為というのは面倒臭さ以上のものが待っている。
それは、「その人が居なくなったら悲しい」というものです。

風景が同質になり、利便性が向上するけど味気ない社会というのは、居なくなっても悲しくならない人たちがシステム上つながっています。
だから悲しむ必要などない。
「悲しみ」すらシステム管理され、利便性の名の下に組み込まれています。

ですが「絆コスト」を掛けて構築した関係性は、失うことで計り知れないダメージを背負うことになります。


この物語は我々に「悲しみをしっかり悲しめているか」と問いかけてくる。

男の子を失った飛行士は悲しみを受け入れられないままいつまでも男の子が現れるのを待ちます。
絆コストをかけた男の子と飛行士は、お互いのことを大事に想い、そして失った悲しみにくれます。
喪失を受け入れることができない。
「悲しみ」とはそういうものだ。


園子温監督が『ヒミズ』や『希望の国』を撮影した理由のひとつに、「忘れないため」というのがあるそうだ。

津波の映像を流し続けるテレビ局に対し「被災者が思い出すからやめろ」という抗議があったそうだが、それは違うのではないか、と。

実際映画を被災者の人に見てもらった時に、「よくぞ映像を残しておいてくれた、我々は忘れたくないのだ」という声があったそうです。


「悲しみ」とは何か。

悲しみをしっかりと悲しめているか。

絆コストを支払い、面倒で時間のかかる濃密な関係性を構築し、その関係が喪失する悲しみすら踏まえて生きよ。

絆コストとは目に見えないものなのだ。



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テーマ: 哲学/倫理学 - ジャンル: 学問・文化・芸術

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