実存浮遊
映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。
2015.03.21 Sat. 14:53 :edit
2&コンセプトアルバム『LIVE IDOL ARTIST』がすべてを超える
2015年3月11日。2&初のアルバム『LIVE IDOL ARTIST』がついに発売となりました。そしてこの日は2&Sakiの誕生日でもあります。
震災の日にそれを突き破るかのように生まれた傑作がこのアルバムです。
3月11日という日に生まれたSakiちゃんの宿命と、それに抗う生き様が刻み込まれた1枚です。
タイトルにあるようにライブアイドルアーティストとしての成長物語が描かれているのですが、3月11日という日により必然的に閉塞的なこの日本を覆そうともがいているようにも見えてきます。
それはこのアルバムの曲順にも表れていて、最初の3曲『片眼のLiliy』、『限界圧縮人形』、『ネガポジmonster』は歌詞の内容が暗く、それ以降は段々前向きな歌詞になっていきます。
そしてこの曲順のおかげで『ネガポジmonster』のラスト「ほらまた今日が始まった」という歌詞がネガティブからポジティブに転じているのに気付くでしょう。
単体で聴くと「嫌な毎日がまた始まってしまった」とも読み取れるのですが、アルバムのコンセプトとして通して聴くと、鍛錬の果てに日常の奇跡的な美しさを知った小さな身体の女の子が、日々を祝福しているようにも読み取れるのです。
このアルバムは2&をテーマにしたコンセプトアルバムなのです。
■ それは感情を与えるかのように編まれる
1曲目『片眼のLiliy』はSakiとSayaの二人組だった2&からSayaが抜けて初めて披露された曲です。
その出来事と相まって強烈に歌詞に物語が刻み込まれた曲になっています。
片眼となり、生きる価値が無いと言われ、幾つもの傷跡を持つという地の底からライブアイドルアーティストの物語は始まります。
2曲目『限界圧縮人形』でも押し潰されそうな少女が出てきます。
圧縮され続けて爆発寸前の少女は、抑えきれない衝動によりリミッターを解除してます。
そして3曲目『ネガポジmonster』になるわけですが、ここでは走って走って泣いても転んでも立ち上がってまた走り続ける少女が登場します。
『アイドル感染拡大』に収録した2&インタビューの記事タイトルを「ライブアイドルは泣きながら走り続ける」としたのですが、それはこの曲から名付けました。
3曲までが2&が立ち上がるストーリーとしても読めるでしょう。
片眼を失い、圧縮され、リミッターが外された少女が走り出す。目的地も決めないまま。
プロデューサーのDAICHI氏によるとSakiちゃんは感情表現が下手だと言います。
悔しくて泣くことはあっても嬉し泣きはほとんど無い。最初の頃はパフォーマンスも常に決められたことだけを淡々とこなすだけだったと。
2&は曲調がロックなのですが「ロック」とはなんなのかが全然伝わらない。
我々は「ロック」と聞くと、反体制や衝動や再現不可能性などが思い浮かぶと思います。でもハロプロやAKBを見てアイドルになろうとしたSakiちゃんに取って、ロックというものが理解不能だったのではないでしょうか。
歌詞を読むとSakiちゃんに感情を与えるかのように丁寧に繊細に言葉が編まれているのがわかります。
なので1stシングル曲『ネガポジmonster』が昔と今とでは印象が全然違うのです。「片眼」と「圧縮人形」を経てからの「ネガポジ」は感情が乗っているのです。
『ネガポジmonster』初披露
2014年2月
■ 瓦礫の山を飛び越えて宇宙へ
『兎の奴隷とカシオペア』、『○の理論』はどちらも宇宙について語られています。その間に『未来を』が入るわけですが、恋愛の曲である『未来を』もSakiちゃんが歌うことで恋愛を超えた何かを意味するように変化します。
それはわかりやすく言うと2&についての「未来を」歌っている、ということです。
『兎の奴隷とカシオペア』では人間様のために奴隷として生きていたか弱い兎がただひとつ人間様に抗う術である後ろ足によって様々なものを飛び越えて宇宙に到達する、という歌詞です。
そして2&の歌詞の宇宙観が優れているのは、カシオペア座にまで到達し元々いた自分を見つめ(もちろん地球すらも塵のようにしか見えないほど極小)、そこから再び等身大の自分に戻ることで真理の切れ端が手に入るという部分でしょう。
『○の理論』ではより仏教の思想に近くなります。
尖っている針も極大して見ると丸くなっていると悟り、すべては「円」なのだ、と気づきます。
そして人として生きることが喜怒哀楽にまみれ、それゆえに生きる意味に気づきます。人と人との円環なわけです。
この3曲は言わばSakiちゃんと2&ファミリー(ファン)について書かれたものだと考えることができます。
奴隷の兎は宇宙に出ることで自分の小ささと大きさに気付き、共に未来を作っていく仲間を獲得します。
とても観念的で寓意的ですね。
最初の3曲がネガティブ。
真ん中の3曲が2&としての方向性を示すもの。
では後半3曲はどんなテーマなのでしょうか。
■ いつまでもずっと
『ドリーム』、『リアル』、『ポッピングシャワーの雨』の3曲ですが、ベースとドラムが同じでギターとメロディが違う『ドリーム』と『リアル』は二つで一つの曲と言ってもいいでしょう。
そして『ポッピングシャワーの雨』では2&ファミリーの為にずっと負けないで走り続けるという覚悟を知ることができます。
『ポッピングシャワーの雨』には2&のライブ恒例の掛け声「情熱情熱情熱情熱、誰にも負けない」の動作が振り付けに入っています。
これは元々2人組だった時に出番前に行っていたものだそうです。それを今はステージ上で2&ファミリー全員で行います。このことからもSakiちゃんのファンに対する想いが伝わってきますが、『ポッピングシャワーの雨』の歌詞にはそれが愚直なまでに叩きつけられています。
「何も無い私だけどこれだけは叶えたい」
「あなたと約束 私誰にも負けないよ」
「私+あなた=何になる?」(その後ダブルアンド!のコール&レスポンスが繰り返される)
Sakiちゃんは自らをソロアイドルと自称しません。Sakiちゃん+2&ファミリーを併せて2&だからです。
今はまだまだ2&の人数が少ないけど、今後もっともっと増えていくでしょう。
Sakiちゃんの想い、2&としての想い、覚悟がたくさん詰まったアルバムです。
いつまでもずっと2&であり続け、2&から辞めることを許さない激情が込められた最初にして最強のアルバム。ぜひ多くの方々に聴いていただき、一刻も早く2&になっていただきたいです。
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