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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『二輪咲き』とは誰のことか 【LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-感謝祭】 


■ リリウムが与えた衝撃

「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」感謝祭初日を観劇しました。

モー娘。に興味を持ち『リリウム』がおもしろいという情報を得たのでDVDを拝見したところ、あまりの衝撃に度肝を抜かれその後ずっと『リリウム』という舞台に心を持っていかれました。
その感謝祭に参加できるということで大変嬉しかったです。しかも『二輪咲き』という短編舞台、キャスト全員のトーク、劇中歌のライブと大変豪華な内容でした。
それをリハーサル1日で作り上げたメンバーとスタッフさんはほんとすごいと思います。本気度が凄まじい。
リリウム感謝祭を2日こなしたあとは今年行った舞台「TRIANGLE -トライアングル-」の感謝祭も控えており、モー娘。メンバーの体力、持久力、記憶力、パフォーマンス力などなど底知れなさに恐怖すら覚えます。


この記事では『二輪咲き』についての想いを中心に感謝祭の感想を書いていきます。
『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-』とそれに関連する作品、そして『二輪咲き』の内容に触れるのでご了承の上お進みください。

キーワードは「二輪咲き」とは誰と誰のことなのか、です


■ 二輪咲きのあらすじ

『リリウム』は登場人物に花の名前がつけられています。そして劇中歌では「永遠に咲き続ける花を作ろうとした庭師」が物語の象徴として歌われます。
庭師とはソフィー・アンダーソンのことなのか。それともソフィーを不老不死にしたクラウスのことなのか。

『二輪咲き』は『リリウム』の前に起きた出来事を描いています。
シルベチカ(小田さくら)がまだ生きているころのお話であり、マリーゴールド(田村芽実)がクランに初めて来た日でもあります。
そしてピーアニー(野中美希)がソフィに殺された日です。

シルベチカが『リリウム』でのリリー(鞘師里保)のように記憶があいまいになっており、リコリス(飯窪春菜)という親友と行動を共にします。シルベチカとキャメリア(中西香菜)が恋人同士のように仲睦まじく、クランのみんなは二人が恋人であると認識しています。
キャメリアのことがどうやら好きらしいチェリー(石田亜佑美)はシルベチカに真相を問いただします。二人は恋人同士なのか、と。
するとシルベチカは「違う」と答えます。

リコリスはシルベチカに脅すように「キャメリアは渡さない」と宣言します。
そしてリコリスとキャメリアは抱きしめ合い、リコリスはこうお願いします。
「私のことを忘れないで」と。
キャメリアはこう返します。
「当たり前じゃないか。シルベチカ」と。

ここでシルベチカが見ていたリコリスは実はシルベチカの別の人格であるとわかります。
つまりひとつの茎に咲いた二輪の花とはシルベチカとリコリスのことであるというオチとなります。


キャメリアとの恋を忘れていくシルベチカと、キャメリアへ恐ろしく執着していくリコリス。
一緒に見ていた連れは、イニシアチブで記憶が操作され薄れていくのに抗うようにして生まれたのがリコリスという人格なのではないか、と考察していました。だからキャメリアに異常な執着を見せます。なるほどな、と思いました。

ではもしシルベチカが塔から投身自殺を謀った時、そばにリコリスがいたとしたら、と想像します。
シルベチカは自分が塔から落ちて死ぬ夢を何度も見ると言います。リコリスは「イレギュラー」という予知夢を見ることができる存在がいることを告げます。
リコリスはシルベチカ自身がイレギュラーであると思い込ませ、いずれ塔から落とそうと思っていたのではないでしょうか。
ひとつはキャメリアとの嫉妬から。リコリスがいくらキャメリアを愛していたとしても、キャメリアが見ているのはシルベチカの顔です。
そしてもうひとつの理由は永遠に死なないヴァンプのクランでただ一人死ぬことでキャメリアがずっと忘れないように刻印を残したのではないでしょうか。


シルベチカとリコリス。この二輪がやがてクラン崩壊のきっかけとなるのでした。


■ 二輪咲きは誰のことなのか

前項ではシルベチカとリコリスがタイトルに込められた『二輪咲き』を意味する、と書きました。

ですが「2」はこの二人だけを指すのではないと思われます。

『デビルマン』の不動明と飛鳥了、『ジョジョの奇妙な冒険』のジョナサンとディオなど、同じ境遇にありながらもなぜか善と悪の二つの道に分かれる物語を描いた作品は数多くあります。

そう考えるとファルス(工藤遥)とソフィー・アンダーソンが決定的に分かれてしまった二輪咲きでもあるのではないでしょうか。
不老不死となってしまいファルスと名乗るソフィーと、不老不死になる前のソフィー。

ピーアニーが不死であるか実験し殺してしまい腹心である竜胆(譜久村聖)に「あなたは私たちからすればTRUMPです」と告げられてしまいます。
ソフィー・アンダーソンを不老不死にし、最も忌むべき存在であるTRUMPと同じであると言われてしまったファルス。

この日から『リリウム』に描かれた日までピーアニーを含めておそらく5人を殺すというハイペースになっていったのは、きっとこれが原因なのではないでしょうか。


そして劇中歌を披露するライブパートでは全曲をほぼ順番通りに歌ってくださいました。
それはファルスがクランを失い、その後長い間眠りについた時に見た夢のようです。
『リリウム』では2番目に披露された『Eli, Eli, Lema Sabachthani?』という曲が感謝祭では一番最後に披露されました。

遠き日を慈しむかのようなファルスの元にリリーが現れます。
死んでしまったと思っていた最高傑作のリリーが出現し、衝撃とともに優しい笑顔を浮かべるファルス。
一方リリーは永久に恨むべき存在を見つけたという冷たい怒りに満ち満ちた表情を浮かべています。
永遠の命を与えられてしまったファルスは永遠の友と出会え、永遠の命を与えられてしまったリリーはかつてのソフィー・アンダーソンのように死ねない身体にした人物を永久に恨むために探し続けたのでしょう。

リリーとファルスという二輪咲きは永久にひとつになることはありえないのです。


■ 神よ、なぜ私を見捨てるのですか?

最後に披露された『Eli, Eli, Lema Sabachthani?』はヘブライ語で「我が神、我が神、なぜ我を見捨てたもうや」という意味だそうです。
キリストが最期に言った言葉だと言われています。

ファルスはなぜ最後にこれを夢想したのでしょうか。
キリストは死ぬということが神に見捨てられたととらえ、ファルスは永遠の命を得ることが神に見捨てられていると感じている。
救いのないという点では同じです。

『リリウム』とは永遠に繰り返されるはずだったクランでの日常が崩壊する瞬間を描いた物語です。
であるならば、「感謝祭」と題されたこのステージも、永遠に孤独であると思われたファルスの日常が崩壊する兆しを描いているのではないでしょうか。
『Eli, Eli, Lema Sabachthani?』とかつてを夢想しつつ嘆くファルスの元に現れたリリーは、すべてを共有できる親友であり、神に見捨てられたファルスにとって神以上の存在として出現したはずです。


『リリウム』という物語がこのような形で終わったのは素晴らしいと思います。
ここに書いたことはあくまで想像の域を出ませんが、リリーがファルスと出会い、ファルスを憎むことでファルスと同じ道を歩んでしまうのか、それともまた別の道を歩むのかなど、語るべき点はいくらでもあります。


リリウム感謝祭を拝見できた幸運に感謝し、作り上げてきたスタッフさんと出演者さんに最大限の賛辞を送ります。


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この記事に対するコメント

通りすがりに失礼します

初めまして、通りすがりの者です

LILIUMをご覧になっての今回の感謝祭だったようですが、ソフィ(ファルス)が不老不死になってしまったきっかけの話の「TRUMP」はご存知でしたか?
今度4度目の再演もされる作品ですが、私は現在DVDとして発売されている「TRUMP」から、TRUMPシリーズの虜になった者です。

LILIUMだけでも楽しめますが、2つとも観てようやくわかること、「TRUMP」のソフィパートよりも前の出来事を描いた「SPECTER」という作品もDVD化してあります
全て末満さんの脚本です
もし、ご覧になっていなければ、是非とも観ていただきたいと思います!

ちなみに、感謝祭は行くことができず、リコリスの存在も知らなかったので、このようなまとめや感想のブログ、本当に助かります!
ありがとうございますm(_ _)m

URL | 廉憐 #-

2015/09/08 19:21 * 編集 *

廉憐さんへ

コメントありがとうございます!


> LILIUMをご覧になっての今回の感謝祭だったようですが、ソフィ(ファルス)が不老不死になってしまったきっかけの話の「TRUMP」はご存知でしたか?

TRUMPとスペクターを勧められ、TRUMPの方は見ることができました。
LILIUMにつながる部分がいろいろあって大変刺激的でした。

ファルスが薬にウルと名付けたのは不老不死になれなかった親友の名前だけでも永遠に残そうとしたのかな?とか。
ソフィとリリーが同じ境遇になったのを見て、『二輪咲き』はこの二人のことでもあったんだな、と改めて思いました。

> LILIUMだけでも楽しめますが、2つとも観てようやくわかること、「TRUMP」のソフィパートよりも前の出来事を描いた「SPECTER」という作品もDVD化してあります

SPECTERもぜひ拝見したいと思っています。
すっかりTRUMPワールドにどっぷりはまってしまいました(笑)。


> ちなみに、感謝祭は行くことができず、リコリスの存在も知らなかったので、このようなまとめや感想のブログ、本当に助かります!

こちらこそお読みいただきありがとうございます。
リコリスについては様々な考察があって、上演が未定とされている舞台『リコリス』もぜひとも舞台化して欲しいと思っています。
LILIUMにつながる作品ということらしいので絶対に完成させていただきたいです!

URL | さかもと #-

2015/09/08 23:18 * 編集 *

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