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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

諸星大二郎「復讐クラブ」から幸福な社会を運営する術を読み解く  

■ 諸星大二郎「復讐クラブ」から幸福な社会を運営する術を読み解く


諸星大二郎自選短編集「汝、神になれ鬼になれ」を読みました。

「マトリックス」にも通じる「夢みる機械」や、子供の成長を哲学的に描いた「子供の遊び」など、かなり読み応えがある短編集です。
今後諸星大二郎を集めます。


さて、今回は「復讐クラブ」という短編を取り上げたいと思います。
「世にも奇妙な物語」で映像化されそうな作品だな、と思ったら、やっぱり映像化されてました。


■ 「復讐クラブ」のストーリー


さえない会社員平野。
何をされても怒らない平野は、毎週復讐クラブに通っていた。
同僚や通行人への不満を提出すると、翌週に復讐報告書が来る。
レベルに応じて復讐ランクがあり、「バナナの皮ですべって転ぶ」など些細なものもある。
平野の上限は10人。
そして「復讐クラブ」を成立させる条件として、参加者は「復讐クラブ」から指令された人物に「復讐の代理をする」というのがある。
自分の復讐をクラブ員の誰かがしてくれ、クラブ員の復讐を平野がする。

上限10人の平野は、10人の身近で疑われない誰かに復讐代理をする。


やがて身近な人を疑い出した平野は、上限を15人まで増やす。
当然復讐指令も増え、仕事がおろそかになってくる。
「復讐クラブ」の上映会でますます疑心暗鬼になる平野。
自分に起こったことと同じ内容の復讐が、別の誰かの復讐として上映されていた。
家で起きたあのことが、実は妻の復讐?

上限30件にした平野。復讐クラブの存在がうっとうしくなってきていた。
上司への復讐指令が出た平野。
運良く上司から酒の誘いが。
上司を酔わせ帰路につく。
夜道の上司を襲おうと来た道を戻ると、上司も平野に襲い掛かってきた。
「復讐クラブ」の手違いで、お互いの復讐をお互いにする、という事態になっていたのだ。
上司も妻も通行人も、みなが「復讐クラブ」に入っていた。
誰もが誰かに恨みを抱いている。
「復讐クラブ」のシステムは崩れない。


■ 「復讐クラブ」に対する「親切クラブ」


「復讐クラブ」のすごいところは、自分ができないことを他人にしてもらい、他人ができないことを自分がする、というのが不備無く運営されているところだ。

恨みという「負の感情」が発生し、それを晴らすために他人が動く。

人のために行動する、というのがうまく回っています。

つまり「復讐クラブ」に習って「良き社会」を作れるということです。
「親切クラブ」というのはどうか。

自分が大事に想う人を10人申請する。
すると「親切クラブ」から指令が来ます。
「電車に乗って前に立った女性に席を譲れ」
「飲食店のレジ打ちにおいしかったですと言え」
「3丁目のパン屋の前に落ちているゴミを拾え」
などなど。


さて、「親切クラブ」はうまく運営できるでしょうか。


■ 「親切クラブ」の存在不可能性を打破する


どうやら「親切クラブ」はうまく回らないようです。
なぜか。
「復讐クラブ」との対比をするとわかりやすいです。
「復讐クラブ」の成立条件は、「自分ができないことを他人にしてもらう」という点にあります。
一方「親切クラブ」はどうか。
自分が大切に想う人への親切を他人にしてもらうのってどう思いますか?
「んなもん自分でしたいよ」って思いませんか?
好きな人に対する親切は自分でしたいもんでしょう。

わざわざ「親切クラブ」に頼むまでもなく、自分がしたい親切は自分でしてしまいます。

では「親切クラブ」を作るにはどうすればいいでしょう。

答えは簡単です。
1週間で行った親切を報告すると、次の週に同じ分だけ親切が返ってくる。

これだとクラブ会員はますます親切への動機付けがなされます。


短編「復讐クラブ」のラストは、主人公の身の破滅というわかりやすいオチが用意されてます。
みんなが「復讐クラブ」に加入している。
そんな社会は生きられない。
なぜなら、すべての不幸は自らが加入しているクラブのせいなんですから。
クラブのせいで自分が不幸になるにも関わらず、自分がクラブを脱退することもままならない。
なぜなら自分の不満の解消をしてくれるものがそんざいしないんですから。
その意味でも「復讐クラブ」のシステムは秀逸です。


では優秀な「親切クラブ」システムとはどんなものでしょう。


■ 優秀な「親切クラブ」システムを構築し、「良き社会」を目指す


「復讐クラブ」の秀逸なところは、「極悪な宗教のように抜け出せない」という部分にありました。

では「親切クラブ」を秀逸なものにするにはどうすればいいのか。
それは「親切クラブ」という存在を不可視なものにすることです。
どういうことか。
例えば、1週間自分にいろいろな良いことが起こります。
そしてクラブに行って報告書を読む。
すると、すごい印象に残っていた親切が、実は「親切クラブ」からの報酬でなかったと知ります。
次の週もいつも通りクラブからの指令を受け見知らぬ人に親切をする。
そして自分自身も誰かから親切を受ける。
「親切クラブ」に行くと、また受け取った親切が記載されていない。
そうです。命令に関係無く親切を受けたんだ、という今までよりランクの高い多幸感を得ます。
そして自分自身も、クラブからの指令じゃない親切を施している。いつの間にか。
こうすることで、受けた親切プラス1の親切を社会に還元していることになる。

つまり「親切クラブ」の存在・比重を軽くしていくのです。
乱暴に言うと「洗脳」ということになります。
なんのことはない。「親切クラブ」側は報告書漏れをあえてしただけです。
11個の親切指令を出し、10個しかその本人に教えない。
これを順繰りで回します。
するとクラブ会員はかなり得した気分になる。
「自分も指令じゃない親切をしよう」という動機付けを得られる。

これが僕の構想する「優秀な親切クラブシステム」です。


僕は「良き社会」を目指す。
自分の行動が回りまわって遠くの誰かを幸せにするシステム。
そしてその幸せが、長い時間・遠い空間を経て自分と関わりがある大切な人に戻ってくるシステム。
それが僕の目指す「良き社会」です。


多くの人に諸星大二郎の「復讐クラブ」を読んでもらい、「優秀な親切クラブシステム」について想いを馳せて欲しいです。

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テーマ: 漫画 - ジャンル: アニメ・コミック

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