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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

「鉄男 THE BULLET MAN」の愛と不愉快 

■ 映画「鉄男 THE BULLET MAN」の爆圧轟音と激震映像に耳と目をもぎ取られる

塚本晋也監督の「鉄男 THE BULLET MAN」を見ました。
「鉄男」も「鉄男2」も見たことないんですけど、男が鉄の塊になる、という知識だけで見に行きました。

以下ネタバレを含むので未見の方は了承の上お進みください。



■ 感情は操作できない 怒りと鋼鉄化について

「鉄男」の主人公は怒りにより鋼鉄化する。
最初は部分的に鋼鉄化します。
怒りが強まると体全体が鋼鉄化する。
兵器と化した主人公の力はすべてを破壊するほどの強大さへと到る。


主人公の怒りを引き起こす役として塚本監督自身が登場する。
主人公の息子を殺し、主人公の妻を殺そうとする。
怒りの矛先を自分に向けさせ、『鉄男』を完全形態にする。
どうやら世界を破壊するのが目的のようだ。
理由は不明のまま。


感情は操作できない。
自分で怒ろうと思って怒ることは不可能だ。
外部から何かきっかけがあり、感情が揺さぶられる。
自分の中にある感情なのに、実は自分自身では操作できない。
主人公は怒りの感情を歌で静めている。
湧き上がった感情を抑えることは可能だ。
でも感情が湧き上がるのを操作することは不可能だ。

主人公は操作不能な感情を刺激され鉄の塊と化す。
怒れば怒るほど鋼鉄は巨大化していく。
そこには愛の両義性が読み取れる。


■ 愛は世界を救うのか滅ぼすのか

物語のラスト、妻に爆弾を仕掛けた男は、主人公に自分を殺すように命じる。
妻を助けたければ自分を殺せ、と。

でも怒りが極限に達し兵器要塞のような姿の鉄男の砲撃は、日本を軽々と吹き飛ばすほどのパワーを持っている。
妻を助けるために男を殺しても日本自体が消滅する。

愛ゆえに世界を破壊するか。
妻を愛していればいるほど、世界は滅ぶ。
愛は世界を滅ぼす。
愛する妻を救おうと思えば思うほど、男への怒りは増幅し、世界を滅ぼすパワーを獲得し、場を壊す。


鋼鉄の要塞となった主人公は結局、男を内部に取り込み妻を救う。
怒りを誘発する原因となる男を内部に取り込み、主人公は鋼鉄の要塞から元の人間に戻る。
日常に戻った主人公は、息子が殺されたトンネルを通っても心は掻き乱されない。
外部ではなく内部が鋼鉄のように強靭になったかのような印象を受ける。


この映画からもわかるように、愛では世界を救えない。
むしろ愛は世界を滅ぼす。
愛は別の者にとっては毒でしかない場合だって十分に考えられる。
送り手が考える愛と、受け手が望む愛は別物かも知れないのだ。


■ 映像表現としての「鉄男」

「鉄男 THE BULLET MAN」は不快な映画だ。
耳を塞ぎたくなるような金属音。
目玉が痙攣しそうなカット数。
意味不明なストーリー。

「タイタニック」みたいなのが映画だと思い込んでる人にとって、この映画体験は大きな傷を残すだろう。

でもこの作品はまさに「映画」だ。
感情を震わせる何か。
スクリーンを通して肉体に突き刺してくる何かがある。

劇場を出て「おもしろかった」「つまらなかった」「泣けた」みたいな脳みそが抜け落ちてるような感想じゃなく、「なんだったんだ、あれは」と家に持ち帰る感想。
日常ではなく非日常。
それこそが映画だ。


鉄が軋む轟音。
激震している映像。
71分間全力疾走しているような、見ている者が息を切らすような映画。

「鉄男 THE BULLET MAN」は不快な映画だ。
でも、人を発狂させるぐらいの力が無くて、何が映画だ、と気付かせてくれる作品だ。
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テーマ: 映画レビュー - ジャンル: 映画

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