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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

映画『明日、君がいない』の自殺者当てゲームの不幸について 

■ 『明日、君がいない』を観て自殺者当てゲームに参加させられる観客の底の浅さを知る


映画『明日、君がいない』は高校を舞台にした物語です。

以下、ネタバレを含むので了承の上お進みください。



■ 悩みは自殺の動機となるか

物語の冒頭。高校のある場所で「2:37」に誰かが自殺したらしいシーンが映し出される。
そこからその日の朝に時間が戻り、6人の生徒のインタビューと同時進行で「2:37」に向かって時間が流れて行く。

朝の登校からはじまり、性の悩みやいじめなどを描きながら、途中途中で6人の生徒の独白が挿入される。

同じ場面でもマルチスレッド式に別の生徒から見た視点に切り替わる。
そうすることで、行動とは違う彼らの内面を描く。

弁護士を目指す優秀なマーカス。
兄マーカスの子を妊娠したメロディ。
スポーツマンで人気者だがゲイであることを隠すルーク。
ルークと影で愛し合い、ゲイをカミングアウトしているショーン。
ルークと恋人同士だと信じているサラ。
障害を持ちいじめられているスティーブン。

物語の進行と共に、さまざまな悩みが明かされる。
強く見えていた者が実は悩みを抱えている。
人には言えない悩みを抱えている。

この映画を見ている者は、登場人物全員が自殺する動機を持っていることを知る。
意識しなくても、「自殺者当てゲーム」に参加させられている。

だが、物語のラストでこのすべてが覆される。
この6人の中に自殺者はいないのだ。


■ 自殺動機不明と抑止の難しさについて

自殺の動機がある(ように見える)6人は自殺しない。
この6人の独白のあと、一人の少女が映し出される。
名前はケリー。
自殺したのは7人目の生徒ケリーだった。

彼女の独白は他の6人とは違い、とても幸福に満ちている。

姉の幼い子供がかわいらしくトラの真似をするシーンを見て笑ってしまったことなどを告げる。
周りの幸福を素直に喜べる女の子。
笑顔がとてもかわいらしい生徒だ。

作中では、マーカスの心配をしたり、排尿障害でいじめられるスティーブンに気遣ったりしていた。
とても心優しい生徒であるケリー。

物語を見ている我々は視線が揺らぐ。
「自殺者当てゲーム」に参加したことの不謹慎さと、ケリーの自殺を防げなかったことのむなしさにより、視線が揺らぐ。

誰もケリーの自殺の動機に気付けていない。
作中でも明確に動機が描かれることは無い。

ただわかるのは、ケリーが誰よりも敏感だったということだけだ。
人一倍周りの苦しみに敏感だった。

自分の悩みに手一杯な彼ら6人はケリーの事に何も気付けていない。
でもケリーは周りの人たちが苦しんでいるのを救えないでいることにこそ苦しんでいる。

彼ら6人のわかりやすい自殺動機からすると、ケリーの自殺の理由は理解できない。


他者に敏感な者が関わることで自殺抑止になるが、その敏感な者自身の自殺抑止は誰にもできない、という不幸が存在する。


こんな小難しい言い回しをしなくてもいい。
ただ単純に、良い奴が自殺するのは悲しい。
それだけだ。

良い奴が自殺するような社会は不幸だ。
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テーマ: 映画レビュー - ジャンル: 映画

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