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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

映画『キラー・インサイド・ミー』の薄っぺらさ 

■ 映画『キラー・インサイド・ミー』は洋画版『シーサイドモーテル』なのか



小説『おれの中の殺し屋』の映画化『キラー・インサイド・ミー』を見ました。

以下、内容に深く触れるため未見の方は了承の上お進みください。



感想から先に書くと、つまんなかったです。
少ない映画鑑賞経験の中から、一番近い感覚はなんだろうと考えました。
まぁ表題にあるように、それは邦画の『シーサイドモーテル』なわけです。


映画『シーサイドモーテル』のチープな虚構性から人間関係の希薄さと何も起こらなさを知る


殺人鬼が主人公なんですけど、その場合大きく分けて2つあると思います。

ひとつは「衝撃と納得」。もうひとつは「倫理を超えて」。

説明します。

■ 殺人鬼が主人公という公式


殺人者が主人公の作品は数多く生まれました。
有名なのは映画『サイコ』や『ノーカントリー』、『ナチュラルボーンキラーズ』。邦画でも『冷たい熱帯魚』や『悪人』や『カミュなんて知らない』など多数あります。
マンガ『MONSTER』や『アクメツ』も殺人者が主人公です。

この手の作品は「衝撃と納得」、「倫理を超えて」の2種類に分類できます。
この二つのどちらかに当てはまらない。もしくは弱い場合は、往々にして駄作になる。
今作『キラー・インサイド・ミー』もそれです。
「衝撃と納得」も「倫理を超えて」もありません。


では「衝撃と納得」と「倫理を超えて」の説明をします。

「衝撃と納得」というのは、最後に殺人者の説明がなされた時の衝撃度と、観客を納得させる強さのことです。

殺人の理由が突拍子も無く、かつ観客を納得させる。

例えば、「チロルチョコが食べたかったから殺した」というのは衝撃的ですが、全然納得できません。

「倫理を超えて」というのは「納得」とは逆で、道徳観を持つ者には到底理解できない理由で殺人を行う者です。
もしくは理由など無い、というのもあります。
殺人自体なんとも思って無い主人公や、殺人が崇高な儀式だと思っている主人公もいます。


これらがあると、我々は鑑賞してて、「こいつなんかすげぇ」って思います。

わかりやすく説明すると、理解可能かどうか、って話ですね。
殺人の動機が理解可能な場合、ストーリーに惹かれ、理解不可能な場合は殺人者に惹かれます。


では『キラー・インサイド・ミー』に戻ります。


まず第一に、主人公に一切凄みがありません。
ナレーションもアホみたいなしゃべり方だし、それが演出かと思ったら全然関係無かったし。
殴殺するんだけど、殺してるように映りません。
演出家が悪いのか役者が悪いのか、それに気付かない監督が悪いのかわかんないけど、殺してる感じが伝わってこない。
だからと言って、「殺すことをゲームだと思ってる」という風でも無い。


そして殺人者として芽生えた理由もヘボい。
母親がマゾで、それに興奮したからだ、みたいな。

売春婦と恋仲になり情欲を重ねるも、彼女を殺すことになるんだけど、「愛してるから殺してあげた」というのも見えない。
「殺してあげることが良いことなんだ」という描かれ方が一切無い。

だから僕は見てて眠くなりました。
うつらうつら。


マンガ『MONSTER』の殺人者ヨハンは、人を殺すことになんとも思って無い。しかもカリスマ性も備えているので、読者は「ヨハンはすごい」と思い込まされる。
映画『冷たい熱帯魚』のでんでん演じる村田は、殺人が日常化している部分に凄みがある。


でも『キラー・インサイド・ミー』の主人公は薄い。
名前も覚えてないほどだ。

■ 作り物にしか見えない薄さ


映画を見終わって、がっかり感とイライラ感しか残らない。
監督は本当に映画が好きなのかと問い質したい。

金かけて50年代の風景を作り上げてるんだけど、ちっとも50年代に見えない。
アメリカの50年代を知らないんだけど、「なんか懐かしい」って感覚はある。
例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見て、マイティが両親の学生時代にタイムワープした時、我々は「古くなった」と体感できる。
でも『キラー・インサイド・ミー』は全然無い。
車も格好も50年代なんだろうけど、役者が50年代じゃねぇんだよ。

そして汚い感じが一切無い。
50年代の匂い、というのも無いし、殺人シーンの匂い立つ感じも一切無い。

清潔で整頓されてるんですよ。
すべてが。

薄い人格形成に、少年の薄い自殺動機。
最後の爆発シーンの薄さ。
爆発して終わらせる主人公の薄さ。

もう何もかもが薄い。
作り物にしか見えない。

ここで一番最初に戻ります。

この感覚は『シーサイドモーテル』に似てます。

作り物にしか見えない風景。
薄い物語。
薄い行動理由。


登場人物の言動ひとつ取っても、理由が薄過ぎてイライラします。
「そんなことする奴いねぇよ」って話です。


殺人シーンで50年代ポップが流れるんだけど、これも映像と音楽のギャップを狙ってるようで、むしろイライラさせる材料になる。
役者に凄みが無いからだ。
しかもそれが何度か繰り返される。
辟易です。


監督は、園子温作品『紀子の食卓』と『冷たい熱帯魚』を観た方が良いです。


すべてが不発の今作。
絶賛してる人がいたら是非とも感想を読ませていただきたいです。
良さを教えてください。
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テーマ: 映画感想 - ジャンル: 映画

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