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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『魔法少女まどか☆マギカ』に世界の調べを聴け 

■ アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』に不幸を引き受ける特異点の奇跡を読み取る



アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』を見た。


宮台真司が絶賛してたので見てみたのですが、とても考えさせられるアニメでした。
全12話。
すぐ見られると思うので、ぜひご覧になってから以降の文章を読んでください。
ネタバレを含むので、作品を見てない場合は了承の上お進みください。



■ 『魔法少女まどか☆マギカ』の精緻で残酷な世界設定


魔法少女を描いた作品は多い。
そのどれもが笑顔でチャーミングで力強い魔法少女だ。
プリキュアなどが最近の魔法少女の代名詞だろう。

では『魔法少女まどか☆マギカ』はどうか。

魔法少女の姿をしたまどかの涙からオープニングムービーが始まる。

まどかの運命を暗示しているかのような泣き顔。
そう、『魔法少女まどか☆マギカ』は悲しみの物語だ。

ストーリーを軽く説明します。

魔女に襲われる町に住む女子中学生たち。
魔女とは社会の暗部などを象徴したような形状をした怪物だ。

その怪物を倒す存在として「魔法少女」が登場する。

魔法少女には、キュウべぇという猫のような生物と契約を結ぶことでなれる。

「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ」

どんな願いでもひとつ叶える代わりに、魔法少女となって魔女と戦う。

魔法少女になるとソウルジェムという宝石がもらえる。
魔女を退治した時に出るエネルギーを吸収するようにキュウべぇから命じられる。

魔女を退治するために魔法を使うのだが、魔法を使うたびにソウルジェムに闇がたまっていく。


自分が住む町を守るために。自分の願いを叶えるために魔法少女になった5人の少女の物語。


冷徹で強い黒髪の少女ほむらは、まどかに魔法少女にならないように釘を刺す。
でも主人公まどかは、町を守るためや友を救うために魔法少女になろうとする。
でも頑なにそれを阻止するほむら。


先輩魔法少女である巴マミの死をきっかけに、魔法少女の謎が次々と明かされる。
その残酷な設定が。

魔法少女化するということは、肉体と魂を分離させることだった。
魂をソウルジェムに閉じ込め、自分だった肉体を超運動で操作できるようになり、しかも肉体のダメージは無痛となる。
魔女と戦う肉人形と化す。
これが魔法少女になる、ということだったのだ。

そしてソウルジェムが暗黒で染まる時、魔法少女は魔女化する。
つまり今まで戦ってきた魔女は、かつて願いと引き換えに魔法少女になった人間だったのだ。


この残酷なシステムに絶望する少女。


キュウべぇの目的は、魔法少女が魔女になる瞬間に発生する強大なエネルギーを集め、宇宙の秩序を保つことだった。


そしてまどかを魔法少女にならないように阻止し続けるほむらの謎も、回を重ねるごとに明らかになってくる。


『魔法少女まどか☆マギカ』は、ほむらの物語だったのだ。


■ 負を引き受ける少女ほむらの絶望


ほむらがなぜまどかを魔法少女にさせないよう必死になるのか。
それはまどかの願いだからだ。

ほむらは魔法少女になり、時間を操る能力を得る。

病弱で頭も悪いほむらは、元気ではつらつとしたまどかに救われる。
初めてできた友達に命も救われ魔法少女となったほむら。

だが仲間は「ワルプルギスの夜」という最強の魔女に殺されてしまう。
まどかを失いたくないほむらは、時間を戻りなんとかまどかが幸せに暮らせる世界を目指す。

何度繰り返しても「ワルプルギスの夜」に勝てないで、友を目の前で失うほむら。
キュウべぇに騙されないで、人間のまま普通に幸福に生きていける人生を歩みたい。
親友まどかの願いを叶えるために何度も時間を戻る。


徐々に力をつけるほむらだが、どんな兵器を使おうが「ワルプルギスの夜」は倒せない。

しかも、まどかのために何度も何度も時間を繰り返したせいで、まどかに宇宙の特異点が集中し、魔法少女になった時に最強の魔法少女となる事が判明する。

すなわち、最強の魔法少女は最悪の魔女へと成長する。
キュウべぇの目的が達成することを意味する。

まどかを何としてでも魔法少女にしたくないというほむらの想いが、まどかを最強の魔法少女にしてしまう逆説。
何度も何度も繰り返してしまったせいで自分の意図しない結果を生む。


思い出されるのは、アニメ映画『時をかける少女』だ。
主人公の少女は友人を救うために何度も過去に戻り失敗をやり直すが、結果的に親友を重大な事故に巻き込ませてしまう。
しかもそれは自分が遭うはずの事故だった、という皮肉。


ほむらは自分がしてきたことの無意味さに絶望する。

すべての不幸を引き受けまどかの幸福を願った少女は、そのすべてが無駄だったと思い知らされる。


少女の願いは不幸を呼ぶ。
この構図は他の魔法少女にも当てはまる。


■ 宇多田ヒカル『誰かの願いが叶うころ』で読み解く魔法少女の願いのはかなさ


ほむらの魔法少女の契約後の願いは、「まどかを幸せにするために過去をやり直す」というもの。

さやかの願いは、「好きな男子生徒の手の怪我を治す」というもの。

杏子の願いは、「神父の父の話を多くの人に聞いて欲しい」というもの。


暁美ほむらの願いは前項にも書いたように、皮肉にも大きな不幸を呼び込む事実を知り、絶望する少女ほむら。

宇多田ヒカルの『誰かの願いが叶うころ』という曲がある。
誰かの願いが叶うころ、遠くの誰かが不幸になっている。
すべての人間が幸福になることなど無い、という内容の曲です。

『魔法少女まどか☆マギカ』では、さらに悲しい現実が描かれる。
それは、「自分の願いが叶うということは、自分に降り掛かる不幸を呼び込む」ということだ。

暁美ほむらの願いは、逆説的にまどかを魔法少女にしてしまう。

佐倉京子の願いは、結局父の一家心中を引き起こす。

美樹さやかの願いは、好きな男子の手を治すというものだが、友達に彼を取られてしまう。


そう。『魔法少女まどか☆マギカ』は、良いことが良いことを呼び込むとは限らない、というこの世界の現実を、悲しいほど忠実に描いている。

誰かの願いが叶うころ、その「誰か」は涙を流すことになる。

では悲しみを引き受けるしかない魔法少女たちは、永久に不幸になるしか無いのだろうか。


そのすべては、鹿目まどかが魔法少女となることで引き受けることになる。


■ システムを書き換えることですべての不幸を引き受ける魔法少女


鹿目まどかの願いはこういうものだ。

「すべての魔法少女が魔女になることの無い世界。魔法少女が不幸になることの無い世界」

過去の魔法少女も現在の魔法少女も未来の魔法少女もすべて救うまどかは、ただひとり不幸を引き受ける魔法少女となる。


キュウべぇが少女を魔法少女とし、魔女化させエネルギーを宇宙運営に使用する、という構図すらも書き換えるまどか。


システムを改変させなければ不幸はなくならない。

そして重要なのは、システムを改変したことが誰にも気付かれない、という設定だ。

社会システムは誰にも気付かれないで運営できることが望ましい。
無自覚に幸福を享受できるような世界が素晴らしい世界だ。

そして、社会システムを運営する者が自分の利益を捨て去り、不幸をすべて引き受けることで社会を回す。


『魔法少女まどか☆マギカ』は、「良いことをすることが良いことを呼び込むとは限らない」というこの世の真理と、社会システムを書き換え、運営する者がどういう存在であればいいかを描いた作品だ。

『魔法少女まどか☆マギカ』から世界の調べを聴け。

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テーマ: 映画感想 - ジャンル: 映画

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