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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『ステキな金縛り』の不合理性 

三谷幸喜最新作『ステキな金縛り』を見ました。

感想から先に書くと、期待値が高過ぎて感動までいけませんでした。

コメディ映画としてはとてもおもしろいし、三谷監督の映画に対する愛情が伝わってくるし、2時間以上の上映時間ですが飽きずに見れる。

役者陣も素晴らしいので素直に笑えます。

でも感動はできない。

なぜか。

奇跡が描かれていないからです。


以下ネタバレを含むので、見ていない方は了承の上お進みください。




■ TKO木下の存在価値


主人公の弁護士役深津絵里の同居人として、売れない役者役のTKO木下が登場する。

裁判が敗勢の中、木下が役者としてアドバイスをする。

「弁護士と役者って似ている。裁判員は観客。観客を感動させることが大事なんじゃないかな」

それに対し深津絵里は「素人に何がわかるのよ!!」とイライラし、その後木下は深津絵里のもとを去る。


物語上、深津絵里は木下の演技性を獲得し、裁判に勝つのが感動的な流れだろう。
でもそうはならない。


エンドロールでは後日譚が写真で披露されるのだが、なぜか深津絵里と木下は仲直りしていて、結婚をし、子供を授かっている。
なんで?

木下のおかげで負け続けだったダメ弁護士がついに成長して勝つことができた、というのなら結婚への流れは自然。
でも特にそんなことも無く裁判に勝てた。
だったらエンドロールの結婚は無くして欲しい。

ここが唯一違和感を持った流れでした。


■ 裁判制度への批判


『ステキな金縛り』は現行の裁判制度への批判が含まれている。

被告人が無罪を獲得する方法が、殺された被害者自らの証言、というもの。
裁判を根底から覆す内容になっている。

本作を見る限り、裁判で重要なのは、証人の証言の信ぴょう性だ。


アリバイを証明するはずの落ち武者の亡霊は、検事に「なぜ人の上にまたがり金縛りにするのか。理由も無くそんなことをするような人物の証言に信ぴょう性などない」と切り捨てる。


それに対し、殺された人物が殺した人を指さすことで問題が解決するとなると、そもそも裁判などいらない。

つまり今作は、現在の裁判制度のくだらなさを皮肉を込めて訴えた作品なのだ。


弁護士と検事は敵同士ではない。
ともに真実をあぶり出すための仲間同士である。
この感動的なシステムすら覆す。

なぜなら被害者が自らの口で真犯人を指さすことですべてが終了するからだ。
弁護も何もいらない。


だが当然ここにも欠点がある。
被害者が本当のことを言うとは限らないからだ。


裁判システムを全否定する作品。

ここでやはり先程の問いかけに戻ってしまう。

TKO木下のアドバイスこそが重要だったのではないか、と。


■ 演技力という武器


『ステキな金縛り』はハズレの無い笑える作品です。お金払う価値があります。
でも僕の評価基準であるDVD購入とまではいかない。

最初に書いたように、この作品には奇跡が起こってないからだ。

でもストレスなく見れるし、笑える。

ラスト、小さいころに失った父親が深津絵里のもとにやってくる。
でも裁判に勝つことができ、ついてない日常から脱却した深津絵里には幽霊を見る能力が無くなっている。

でも幽霊である父親を身近に感じる深津絵里は、少女のような表情をする。

ここでこの役は深津絵里でなければ成立しないことがわかる。
他の女優では弁護士であり、かつ少女である表情を作れないだろう。


そしてなんと言っても西田敏行さんの素晴らしさだろう。

この二人がいなければこの映画は成立しない。

幽霊としての怖さ、戦国武将としての威厳、コメディ映画としてのおちゃめさ。
落ち武者の亡霊を愛おしくおもわせる演技なんて、他に誰ができようか。



幽霊も人間もつねに身近に共存している。
この考えは、三谷監督の、今は亡き人物たちに向けたメッセージなのだろうか。



『THE有頂天ホテル』が僕の中で三谷作品1位なのですが、2位ですかね。
『ラヂオの時間』も好きなんですけどね。
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テーマ: 映画感想 - ジャンル: 映画

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