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実存浮遊

映画やアイドルなどの文化評論。良い社会になるために必要な事を模索し書き続けます。

『ももドラ』有安回を見る前にクイックジャパンを読んだほうが良い理由 

■ 『ももドラ』第3話 有安杏果主演『コトダマ』が描く大人になるための通過儀礼と自分殺しの喪失感について



ももいろクローバーZがドラマに挑戦。

疾風怒濤の活躍を見せるももクロが、事務所スターダストのお家芸であるドラマで我々に勝負を仕掛けてきた。

ももいろクローバーZが倒れるか、我々モノノフが倒れるか勝負だ。


現在第3話まで配信中。
15分ぐらいのショートストーリーながらも、これが無料なんて大変ありがたいです。


第1回の玉井詩織主演『神様だって、』は好きな男子に対してどうアクションしていいかわからず神様にお願いする女の子の淡い恋心を描いた。

第2回の佐々木彩夏主演『姉カレ』では結婚する姉との関係に戸惑う少女の成長を、飲めなかったほろ苦いコーヒーというアイテムを使うことで描いた。


そして第3話。

有安杏果主演『コトダマ』。

以下ネタバレを含むので、今すぐテレ朝動画にアクセスして『コトダマ』を見てきてください。
18分だし無料だし面倒がらずに。


■ 自信なさげな少女と自信満々な少女の対峙


ストーリーを簡単に。

陸上部(バナナマン日村の以前のコンビ名ではない)の有安杏果。
レギュラーになれずに落ち込む彼女を励ますみんな。
それでも素直に応えられない有安。

「私が消えても世界は変わらない」
高城れにと話すことで少し気が晴れた有安は、図書委員を努める高城れにがいる図書室で本を借りる。
するとその本の図書カードにはすでに「有安杏果」の貸出記名が。
初めて借りる有安は困惑する。

高城れには「ドッペルゲンガー」という怪奇現象があることを有安に教える。
「ワインビネガー?」
「ドッペルゲンガー!!」

自分と同じ姿かたちをした人物を見ると死ぬ。
回避方法は相手を罵倒すること。

数日して高城から電話が。

「今どこ?図書室に杏果がいるんだけど……」
「私が行くまで私を見張ってて!!」

通りがかりの男子生徒が持つフライドポテトを大量にほおばり走り出す。
走れ!

屋上に逃げる有安と、追い詰める有安。

軽く笑みをたたえ、冷静に見据える有安と瓜二つの少女。

それを見て混乱する有安は、もう現れないでと叫ぶ。
するとその少女は屋上の手すりに座り出した。


■ 死んだ半身はどちらなのか


自分の嫌いなところを今にも落ちそうな少女にぶつける有安。

「すぐ落ち込んで、同情されるといじけて、なぐさめてもらえなかったら自分なんかいなくてもいいなんて思ったりして、そんなお前が大嫌いなんだよ!!」

冷静にすべてを受け止めた少女は立ち上がるとそのまま屋上から飛び降りる。

その場にへたり込む有安。
泣き崩れる有安は何度も何度も謝る。

「ごめん。私のせいってわかってたんだ。ほんとにごめん」


以上がストーリーです。


通過儀礼を描く物語は3つのパートに別れます。

それは、「離陸→混融→着陸」です。

日常を離れ(離陸)、非日常を体験し(混融)、再び日常に戻る(着陸)
すると、非日常を味わう前の日常とはまったく違う世界が広がっている。


今回の『コトダマ』では、離陸と混融が描かれていますが、着陸が描かれていません。


物語の最初に5人が登場するシーンがあります。
落ち込む有安ちゃんをはげます4人。
しおりんとあーりんが少しケンカをしてしまい気まずい空気の中、ひとり帰ってしまう有安ちゃん。

ここをフックにすれば良かったのではないでしょうか。

最後も5人が同じ部屋でおしゃべりしてるシーンにし、大人になった有安ちゃんの笑顔で閉めても良かったかな、と。
そのためには何かアイテムが重要になってきますが、この物語にはそのアイテムがありませんでした。

例えば『グーニーズ』で言えば主人公マイキーがラスト吸引器を捨てることで大人になったことが一目でわかります。
『スーパー8』では主人公が大事なペンダントを手放すことで大人になる。

『コトダマ』でも何かキーアイテムがあれば良かったのですが、アイテムを使って成長を描くのは前回のコーヒーでやってしまいました。


キーアイテムを使い、通過儀礼の構造に当てはめてストーリーを作ると確かに感動しやすいしわかりやすいです。


でも何度か『コトダマ』を見返して、このラストが良かった、と思うに到りました。

それは哲学的な問題をはらんでいるラストだったからです。

哲学的問題とは何か。

「屋上から飛び降りた少女こそが有安杏果なのではないか」という問題です。


■ 成長するということは自分を死なせるということなのか


物語の主人公で、レギュラーになれず落ち込んでいる少女を「ネガ有安」、冷静で強そうで屋上から落ちた少女を「ポジ有安」と表記します。


ポジ有安は、ネガ有安を冷静に見つめほほえみながら見守っているようです。
ネガ有安はれにちゃんに言われたように、自分に向かって自分の悪い点を叫ぶ。

すると自分は屋上から飛び降り、叫んだ自分だけが残る。

死んだ自分は明らかに自分よりも上に位置する存在だった。
すべてをすでに理解しているような立ち居振る舞いをしていた。
その少女を死なせ、自分だけ生き残る。

半身を死なせ生き残った少女は泣き崩れる。

そしてこのセリフだ。
「ごめん。私のせいってわかってたんだ。ほんとにごめん」

これは自己中心的ですぐいじける子供のままの自分のせいで死なせてしまった自分への謝罪。
泣き崩れたまま立ち上がらずにラストを迎えるのも、半身を失ってしまったからだ。


そしてこの物語は、先ごろ発売されたクイックジャパンVol.99の有安杏果インタビューを読むことで、さらに深度が増す。



この物語は、有安杏果の過去との決別を描いている。
当然現在の有安杏果があるのは過去があったからだ。
だから過去という半身を死なせ、さらに先に進むという選択は、彼女自身では下せない。
でも成長するということは過去と決別し、未来に進むことだ。


過去と決別し、それでも過去の自分への感謝を忘れず、すぐには立ち上がれないラストはとてもメッセージ性が強く、とても感動的なものだ。


有安杏果という物語に打ち震えているファンは、ぜひクイックジャパンのインタビューを読み、『コトダマ』を刮目して見て欲しい。
涙なくして見られないだろう。


我々は知っている。
有安杏果は、何度倒れようが心配してしまうぐらい立ち上がり続ける小さな巨人だということを。

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テーマ: ☆女性アイドル☆ - ジャンル: アイドル・芸能

この記事に対するコメント

補論

有安杏果ブログに思わず書き込んだものをこちらに再掲します。
補足としてお読みください。


  ※  ※  ※  ※  ※


はじめて書き込ませていただきます。さかもとと申します。


『コトダマ』は過去2話と違い異質な内容でした。
ラストに震え感想を書かずにいられません。


通常大人に成長する物語を描く場合、3つの構成を使います。
(離陸→混融→着陸)

日常を離れ、非日常を体験して意外な自分に気付き、再び日常に戻るが前の日常とは景色が変わっている。
(朝日の美しさが理解できたり、嫌だった物の良さがわかったり)

わかりやすい方法としてキーアイテムを使う場合も多いです。
(子供の頃から持ってたタオルが無くても寝れるとか、思い出の手紙を破り捨てるなど)


今回の『コトダマ』はその2つのパターンに反しています。

自分そっくりな少女に出会い屋上から落ちるのを目撃するという非日常を体験したあとの日常が描かれない。
わかりやすいキーアイテムも登場しません。


自分の嫌いな部分を叫び、ネガティブな自分と決別して泣き崩れる。
晴れ晴れとした笑顔で立ち上がることもない。


これはクイックジャパンの有安さんのインタビューを読むことでより深く理解できるラストだと思いました。

つらく苦しい過去がいるからこそ今がある。
過去も大事。
でも未来に進むためには過去に頼ったままではいけない。


このドラマは、過去という半身を脱ぎ捨て倒れ込むまでを描いた物語だと思います。
続きは現在とこれからのももクロの活躍で見せるという決意表明でしょう。


乱文乱筆失礼いたしました。
大変素晴らしいドラマです。

URL | さかもと #tHX44QXM

2011/12/24 23:42 * 編集 *

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